※この記事は作品のネタバレを含みます。
7月14日の映像ソフト発売に先駆けて期間限定で上映された『ゼロワン Others 仮面ライダー滅亡迅雷』を観てきました。
本作はテレビ版『仮面ライダーゼロワン』及び『劇場版仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』の続編です。
テレビ版で仮面ライダーゼロワン・飛電或人と激闘を繰り広げ、最終的に和解した滅亡迅雷.netの新たな物語が描かれました。
滅亡迅雷.netの4人に加え不破諫や刃唯阿、アズといったお馴染みのキャラクターはもちろん、新たなる敵・仮面ライダーザイアも登場します。
個人的に本作は自己犠牲の物語だと感じました。
仮面ライダーザイア・リオン=アークランドの策略により人類から危険視されてしまう滅たち。
それでも彼らはリオンの操り人形とされていたヒューマギア・ソルドを解放するために戦います。
その結果待ち受けていた『破壊』という結末。
本作のラストは次回作の『ゼロワン Others 仮面ライダーバルカン&バルキリー』に続く形で幕を閉じます。
元々仮面ライダーは人知れず世のため人のために戦う存在でした。
無理やり改造人間にされてしまった自分のような人間をこれ以上増やしたくない。
仮面ライダー一号・本郷猛はそのためにショッカーと戦います。
その本郷と同じように人知れず世界の悪意を監視し、戦うことを選んだ滅亡迅雷.net。
本作で彼らが戦うリオンは、口では耳障りの良い言葉を吐きながら裏では利益のために戦乱を広げようとする存在です。
ショッカーのように世界征服を狙うというより、石ノ森章太郎原作の『サイボーグ009』の敵組織・ブラックゴーストのような死の商人でした。
この辺が個人的に燃えたポイントでした。
圧倒的な組織力を持つZAIAエンタープライズに対し、滅亡迅雷.netはたった四人。
仮面ライダーシリーズだと多くの場合悪の方が組織力は大きかったですよね。
間違いなくテレビシリーズだと滅亡迅雷.netは悪役だったけど、本作ではそれが逆になっている。
そのことが人間社会からはじき出されている滅亡迅雷.netの孤独を浮き彫りにしていました。
そしてそんな孤独な存在って、紛れもなく孤独なヒーローである仮面ライダーだなって思ったんです。
自分たちの戦いに巻き込まれて人間が傷つくことを恐れる滅と、それでもソルドを助けたい迅。
人間と仲間の間で葛藤する滅の姿が切なかったですね。
彼が人間のことを思ってくれている心情が嬉しくもあり、同時に彼を苦しめているのもまた人間であることに何ともいえない感じがしました。
その迷いを打ち消したのが不破なんですが、滅と不破の会話が良かったですね。
これがもし不破じゃなくて或人だったら、滅と一緒に悩んで行動が遅くなったと思うんですよ。
この二人もずっと戦い続けてきたので、お互い思うことがあるんだろうなあと感じられました。
仮面ライダー滅亡迅雷は滅亡迅雷.netの4人の存在が結集して生まれた仮面ライダーです。
この存在が誕生するのもリオンの策略のうちでした。
その事実を知ってもそれを受け入れ、仮面ライダー滅亡迅雷の力で仮面ライダーザイアは倒されます。
しかし滅亡迅雷の暴走は止まらず、あろうことか滅たちのボディを破壊してしまうのでした。
まるで戻るべき退路を自分の意志で断つように。
この行動って多分、ザイアを倒した後に自分たちも倒されることで争いを終わらせようという滅たちの自己犠牲じゃないかと感じました。
彼らは人間のために作られたヒューマギアだから、そうすることで人間が平和に暮らせるならそれがいいと考えたんじゃないかと。
これって滅亡迅雷.netなりの『愛』で、彼らが人間のために献身してくれているように思いました。
本作は人間の愚かさと滅たちの思いが対比となって描かれていて個人的に楽しめました。
ただ本作は前後編の前編に当たる話なので、これ単体では物語が完結しないのが好き嫌いが別れるところ。
全体的な評価は『バルカン&バルキリー』を観てからもう一度ということでしょう。
とはいえゼロワンの世界に親しんだファンには、人間と同じように葛藤を経て成長していく滅亡迅雷.netの姿にグッとくる一作なのは間違いない作品でした。