作品情報
サブタイトル:「怪人がくれた勇気」
放送日:1991年2月17日
監督:小笠原猛
脚本:増田貴彦
あらすじ
狼男が出たという事件を捜査するソルブレイン。
大樹は山口直人という少年から狼男がボンドという男性ではないかと聞かされる。
感想
前回までは、メインライターの杉村升さんによる世界観の構築が描かれました。
今回からソルブレインでも、ゲストライターの参加がはじまります。
トップバッターは前作「特警ウインスペクター」で脚本家デビューを飾った増田貴彦さん。
ウインスペクター37話「アマゾネス来襲」で、犯罪者の前に倒れる女戦士の姿を描かれました。
また、今回監督を努めたベテランの小笠原猛監督もソルブレイン初参加となります。
ゲストに「五星戦隊ダイレンジャー」でザイドス少佐を演じた田村円さん、「超新星フラッシュマン」でピンクフラッシュ・ルーを演じた吉田真弓さんと特撮ファンには嬉しいキャスティングです。
ホラーチックな展開を見せる冒頭。
普通の男性が怪人化する場面は、演じる役者さんの上手さもありなかなかの恐怖です。
狼男が出たという事件を捜査することになるソルブレイン。
同時に、最近失踪事件が相次いでいることが玲子の口から語られます。
ちょっと警察が出る事件かどうか微妙と思いましたが、怪物的な存在が出る事件はウインスペクターの頃も起こったのでソルブレインも対応するのでしょう。
捜査の過程でボンドという男性を探す山口直人少年と出会う大樹。
塾をサボり、不良仲間に公園で寝泊まりする男性を襲うように言われた直人。
それを断り、逆に袋叩きに合った時にボンドと名乗ったその男性に助けられた直人は交流を持つようになります。
この不良グループが大人を襲う場面、現実にこういう事件は起こるので恐いですね。
世界観にウインスペクターよりリアリティーを感じます。
「やりたいことがないのは君が何もやってないからだよ」
学校には行かないと言う直人にボンドがかけた言葉が胸に響きます。
直人からボンドの本名が市川光一で、未来食品開発という会社のモニターをしていたことを知る大樹。
早速会社を訪ねると、地下から狼のような声を聞きます。
社長室に通される大樹。この社長室は「特捜ロボジャンパーソン」の帯刀コンツェルン!
この頃から悪役の部屋として使われていたのですね。
ソルブレインはボンドが失業していたことを知ります。モニターは生活費のためにやっていたこと。
家族がそのことに気づかないくらい、ボンドの家庭環境は冷え切っていたのかもしれません。
ボンドの人生に疲れている様子は、失業だけでなく家庭のことも影響していた可能性が考えられます。
ボンドと再会した直人。
その通報で現場に駆け付けたソルブレインによって事件の背景が明らかに。
未来食品開発の目的は戦闘用兵士を作ること。ボンドや失踪した人々はその犠牲者でした。
この兵士を作るという目的は、ソルブレインの翌年に発売された「真・仮面ライダー序章」の財団を彷彿とさせます。
これは今なら改造じゃなくて、戦闘用強化服とかになるんじゃないでしょうか。
時代によるリアリティーの考え方がなかなか興味深いです。
しかし怪人化したボンドは未来食品開発と社長を襲います。
またも建物が火災・爆発の流れ。もっとも、ちゃんと怪人が滅茶苦茶に暴れてるという理由があるのでそこまで無理な展開には感じませんでした。
今回、怪人化させられた他の被害者相手に格闘戦を見せるソルジャンヌが描かれます。
前回まで、ほとんど目ぼしい活躍場面がなかったのでやっとといった感じです。
女性らしい、しなやかな身のこなしはバイクル達やソルブレイバーとはまた違った魅力があります。
それでも徐々に怪人に追いつめられてしまうのですが……
まあジャンヌは元々戦闘用ではないし、今回は相手も身体能力が強化された怪人なので仕方ないでしょう。
ソルブレイバーの必死の説得で人間に戻るボンド。
ボンドの姿に勇気をもらった直人の言葉を受け、ボンドもまた人生をやり直す決意を固めます。
直人がボンドに自分の上着をかけてあげるんですが、ここがいいですね。
大人が少年に上着をかけてやるみたいな演出はよくありますが、その逆は珍しい。
これでボンドの心が救われたんだということが感じられます。
勿論、それは事件を解決しボンドを救出したソルブレインの活躍のお陰。
人の命と心を救うというテーマを描き切った良作でした。
正直、この時点までの話では一番面白かった。
大樹が未来食品開発を訪ねるところなんかも、刑事物の雰囲気がしっかり出ていましたし。
すっごく堅実な作りなんですよね、このエピソード。
人情が人を救うっていうことに対して。
それでいて、世界観を破綻させない範囲で怪人も出して飽きさせない作りになっている。
杉村さんの脚本が世界観の構築なら、増田さんの脚本はストーリーの構築の役割を果たしたんじゃないかと思います。
先の展開への楽しみを感じた話となりました。