作品情報
サブタイトル:「消えた強化スーツ」
放送日:1991年3月10日
監督:三ツ村鐵治
脚本:山田隆司
あらすじ
廃棄予定だったソルブレイバーのプロトスーツが盗まれた。犯人は正木、玲子とソルブレインのメンバーを次々に襲っていく。
感想
レスキューポリスシリーズではありそうでなかった偽物エピソード。
厳密にいえば偽物ではないのですが、姿の似た存在が敵となって現れるパターンはバトルの少ないレスキューポリスでは新鮮に感じます。
脚本を手掛けたのは山田隆司さん。数々のアニメ作品に参加された脚本家です。
前作の「特警ウインスペクター」でも脚本を書かれ、警察官でありながら道を踏み外した犯人が登場する第21話「涙に散った銃弾!」は本作と類似点が見られます。
登場人物の配置は似ていながら、プロトスーツというガジェットを考えられた点は非常に素晴らしいと感じました。
考えてみれば、装備なんだから試作品があるのは当然ですよね。
使用中の装備が盗まれる話はウインスペクターにもありましたが、その話とも差別化がされていたと思います。
射撃訓練中の大樹のもとの現れた警察学校の同期・岡山。
なぜ大樹がソルブレインの隊長に選ばれたかわからないと因縁をつけます。
そこに現れた岡山の上司・笹本。的の右肩を狙う大樹に対し、心臓を狙う岡山にそうした部分が選ばれなかった理由だと諭します。
ここまでは、演じる春田純一さんの誠実な雰囲気と相成って笹本は良い人そうです。
しかし、大樹に因縁をつけにくる性根の悪さが岡山が選ばれなかった真の理由だと思います。
家業を継ぐために警察を辞める挨拶をしにきたという笹本。数日後、廃棄予定のソルブレイバーのプロトスーツが盗まれます。
プロトスーツはソリッドスーツより性能は勝る代わりに、装着時間が二分短く体への負担が大きいとのこと。
これだけ聞くと二分ぐらい問題ないのではと最初は思いました。
しかし、ウインスペクターで装着時間の問題は何度も出てきたのでその辺りがプロトスーツが選ばれなかった所以でしょう。
ちなみにプロトスーツの色が所々赤なのはファイヤーの名残でしょうか?
そのプロトスーツを身に付けた犯人に正木が襲われます。
正木の怪我は、並みの人間なら大変なことになっていたと語る大樹。
暗に正木は普通の人間じゃないことを示唆してませんか(笑)?
やはり正木の正体は風見… あるいは早川…
まあ、正木本部長は常人より鍛え込んでいるという意味なのでしょうが。
ソルブレイン本部の掃除のおばちゃんから、プロトスーツ廃棄の話を盗み聞きしていた人物の話がもたらされます。
というか、「知っている」だけならこの掃除のおばちゃんも容疑者の一人ですね(笑)。
その情報から岡山を疑うソルブレインですが、岡山は正木が襲われた時風邪で休んでいたと言い張ります。
岡山が嘘をついているようには思えないという大樹。
そんな大樹に正木は、ソルブレインの隊長候補に大樹と笹本が残っていたことを語ります。
笹本のアリバイを洗うソルブレインですが、笹本が勤務する笹本自動車の社員達は笹本のアリバイを証明します。
一方、プロトスーツを着た犯人が今度は玲子を襲います。ソルジャンヌに変身し戦いを挑む玲子ですが返り討ちにあいます。
どう考えてもジャンヌがブレイバーに勝てるはずはないんですが、そこは警察官としての意地だったのでしょうね。
犯人からソルブレイン本部に挑発の電話がかかってきます。クロス2000がそれをボイスチェンジャーで変換された声だと分析。
笹本自動車を張っていた純が社長室を訪ねると、ボイスチェンジャーを付けて電話をかける笹本の部下を発見します。
全てがばれた笹本。それまでの善人の演技からうって変わって春田さんの悪役演技が光っていました。
さすが、ヒーローと悪役を両方演じてこられた方だから出せる凄みを感じました。
そして遂にソルブレイバー対ソルブレイバーの戦いがはじまります。
それにしても、笹本自動車は何でこんなに笹本の犯罪に手を貸したんですかね?
社員は笹本に弱みでも握られていたんでしょうか? それにしては解体業の男など嬉しそうに笹本に手を貸していたようですが……
元からダーティーな部分のあった会社なのか、笹本がそれを握りつぶしていたのか。
笹本が犯行に及んだ理由は、ソルブレイン隊長に選ばれなかったことでプライドを傷つけられたためでした。
しかし笹本自動車のことを考えれば、真っ当な理由で警官になったのかどうかも怪しくなってきましたね。
プロトスーツの前に手も足も出ないソルブレイバー。
ケルベロスΔを使った剣の殺陣はとてもカッコ良くて見応えがありました。
しかし、この殺陣の最中に「ブォーン」とライトセーバーみたいな音がするんですがあれは何だったんでしょうかね?
勝敗はプロトスーツの時間切れで笹本が敗北。戦いの中で起こった火災からソルブレイバーは命がけで笹本を救出しました。
ここまでの展開は非常に見応えがあってよかったのですが……
いきなり火災の中に子どもが残っていることを純が発見します。それを命がけで救出に向かうソルブレイバー。
子どもは助かりますが、限界を越えた大樹は倒れてしまいます。
その姿を笑う笹本に、正木は上からしか物を見ず命がけで人命を救おとするソルブレイバーの勇気をわかろうとしない部分こそ笹本を隊長にしなかった理由だと伝えます。
涙する笹本の更生を願うソルブレインの姿で物語は締められます。
ラストの流れ、伝えたいことは凄くわかるんですよ。でも、子どもの登場があまりに突然で唐突さがぬぐえませんでした。
さらに作劇的にも、ソルジャンヌもソルドーザーもソルブレイバーのを見ているだけで現場に行かない。
これはさすがに「あなた達が行け」と突っ込んでしまいました。
こういう扱いにするなら、プロトスーツにジャンヌとドーザーが行動不能にされる描写が必要だったと思います。
本当にラストの唐突さだけが残念でしたが、それ以外は良作といって差し支えないクオリティの話でした。
西尾大樹という人物は、その背景がまったく描かれてこなかったので家族が描かれたウインスペクターの香川竜馬に比べると人物描写が薄目でした。
それが今回の話によって、ようやく大樹の人物像が描かれだしました。
やっぱり人間が人間を救う話なら、主人公達がどんな人なのかの描写は必要不可欠ですね。
例え恨まれても憎まれても、人の命を守るために全力を尽くす男。
監督の三ツ村さんの拘りでしょうが、子どもを助けた時に子どもが乗っていた三輪車も助けるソルブレイバーの姿が印象的でした。
正木の不在時に隊長として指揮を取る姿も大樹の頼もしさを描いていたと思います。
こうして見ると、実は今回の話はソルブレイン全話の中でもかなり重要な話ではないかと感じます。