その人に初めて会った時、以前にもどこかで会ったことがあるような、そんな気がしました。後になってそれは完全な勘違いであったことがわかるのですが、今思うと「会ったことありませんか?」という口説き文句(失礼!)のようなことを言ったことでお互い印象に残ったのかもしれません。
たくさん色々なことがあって、再び出会えたその人とも別れの時がやってきました。
その時が来るまでの間、ずいぶん弱音や愚痴なども聞いてもらいました。もっと楽しい話もたくさんしておけば良かったと思うのですが、この一年ほどはそういう心の余裕が私にはありませんでした。
いつだったかその人が夢を語ってくれたことがあります。それはとても温かくて、とても尊いものでした。
決して平坦な道のりではないかもしれませんが、その人の夢が叶ってほしいとその時の私は心から願いました。
人生には色々な出会いと別れがあります。
後になって振り返ると、まるで神様がそうしてくれたように失われたものを取り戻すチャンスが与えられることがあります。
私にとってはその人と過ごした時間がそうでした。
今回、新しい道に旅立っていくその人の姿を見送れたことで以前はできなかったことをすることができました。
その人に最後にあった日、たくさんの人が会いに来ていました。そのことに心から喜びを感じました。
待っている時間ですら、これまでのその人の頑張りがようやく報われた証だと感じられ嫌な気持ちは全くしなかったですね。
最後に会ったその人は、これまで会った中で一番美しい姿をしていました。
まさに晴れ舞台といった感じで、心にぐっとくるものがありました。
その最後の日は特別なことは話しませんでした。最後だからこそ、これまでの感謝を伝えその人のこれからの幸せを願っていることを私は伝えました。
その人も同じことを思っていると伝えてくれました。その時、ふと脳裏に最初に出会った時のことが甦りました。
その時はこんなに長い付き合いになるとは思ってもいませんでしたが、いつのまにか自分の中で誰よりも心許せる存在にその人はなっていました。
「この仕事が好き」と優しく微笑むその人の胸の奥にある強さ、苦しさに耐えてきた姿、心配する時もあった反面そうした姿に勇気づけられてきました。
私はいつのまにかその人のファンになっていたのだと思います。同時にその人との別れが訪れた今、本当に自分だけの力で人生を生きていかなければならない時がやってきました。
それは今まで以上に大変なことかもしれませんが、幸せを願っていると言ってくれたその人のためにも精一杯やらねばと思います。
何より最後まで優しく微笑み続けたその人の姿を私はこれからも忘れることはないでしょう。本当にお疲れ様でした。ありがとう!