2年間とはあっという間でした。
彼女が最初にお店に来た時はコロナ禍の真っ只中でしたね。最近はコロナのコの字も聞かなくなったので、何だか何十年も遠い昔のような気がします。
当然なんですが、最初はやっぱり緊張していました。先輩メイドの後ろに隠れるようにして、お客さんの様子を見ていました。
おとなしそうな子だと思いました。もしかしたら短い期間で卒業してしまうかもと思いました。
それがこんなにも長くいてくれたことに驚くと同時に感謝をしています。
この2年間は色々なことがありました。たくさんの出会いと別れがありました。
だけど彼女がこの店にいてくれることに大きな安心感がありました。
あれは私の推しの卒業が発表された時でしたが、彼女が心配して「大丈夫?」と聞いてきてくれたんです。
その言葉が本当に嬉しかったですね。自分のことを誰かが気にかけてくれていることが嬉しかった。
推しは卒業してしまうけど自分は決して一人ではないような、そんな気持ちを彼女にもらいました。
最初は緊張していた彼女も、1年を過ぎると先輩メイドとしての風格が出てきました。
たくさんのお客さんにも存在を知られるようになり、ファンも多かったと思います。
次々と入ってくる後輩とも良好な関係を築けていたようで、時折他のメイドのSNSで姿を見かけると仲のいい様子が嬉しくなりました。
そんな中でも、彼女とほぼ同じ時期に入った一人のメイドとのコンビが好きでした。
特に何がきっかけでコンビに見えるようになったのかはわからないのですが、異なる個性の二人が並んでいる姿が私は好きでした。
そういう出会いはなかなかないものです。何かが違っていればきっとこの二人は出会わなかった。
その仲の良いメイドが店を卒業するときは彼女もとても寂しそうでした。
それでも彼女は頑張って今日までメイドを続けてくれました。そこには最初の頃のように、緊張して先輩の後ろに隠れていた姿はもうありません。
いつも一生懸命、積極的に後輩たちの前に立つ姿は立派だったと思います。
卒業した彼女と仲の良かったメイドが店に戻ってくることになりました。
そのことを店で彼女に話した時、嬉しそうな顔をしていたのが印象的です。
だけどこうして卒業を迎える今、もしかしたら今度は自分がここを去ることに複雑な気持ちを抱いていたのかもしれません。
無理やりなこじつけかもしれませんが、その子が戻ってきてくれたのは2年間頑張ってきた彼女に対しての神様からのご褒美だったのかなと思います。
新しい道に進むにあたっては多くの不安があるでしょう。
これまでの日常が変わっていくというのは、良くも悪くも最初は戸惑いの連続です。
それでも彼女ならきっと大丈夫だと私は思います。
メイドカフェという場所にはいろいろなお客さんが来ます。みんなそれぞれ生まれた場所も育ってきた環境もバラバラです。
価値観も大きく違います。それは彼女と一緒に働いてきたメイドたちも同じことがいえます。
そんなたくさんの人たちと彼女は出会い向き合ってきた。
人との出会いがたくたんあったということは、人知れず大変なこともあったと思います。
だけど彼女はそれから逃げずに向き合ってきた。
2年間という長い時間この場所にいてくれたことが、何よりもそれを証明しています。
だから今後の人生で大変なことがあったとしても、彼女ならきっと大丈夫です。
それでも少しだけ過去を振り返りたくなる時があったとしたら、どうかこの場所のことを思い出してほしい。
彼女のことを大切に思っている人たちが、ここにはたくさんいるから。
約2年間のメイド生活本当にお疲れさまでした。楽しい時間をありがとうございました。
次の新しい目標に向かって行ってらっしゃいませ。