はじめに
ここ数年は本当にたくさんの方との出会いがありました。
その中で強く感じたことがあります。それは『自分の本音に向き合うこと』。
というのも出会った方の中で『心に余裕がある』『生き生きとしている』といった印象を持った方は全員【自分が何をしたいか】を明確に持たれていました。
対して私自身は毎日を生きることで精一杯で、自分の本当の気持ちに向き合うことをしていませんでした。
それでも今は、人は『誰かが望んだ夢』のために生きるより『自分が願った自分の夢』のために生きることが悔いのない人生を送れると考えています。
福岡市天神にあるメイドカフェ・めるドナ。
そこで出会った一人の方も、大きな夢に挑戦しようとしていました。
きっかけ
「最初は女優志望でした。でも、あるアイドルが好きになり女優以外の芸能の道に魅力を感じたんです」
その言葉を聞いた時に、きっとこの方も自分の本音にきちんと向き合われている方だと感じました。
もしも自分の心に向き合っていなかったら、好きなアイドルから自分の進む道を考えることなど恐らくはないと思うからです。
その方がアイドルを目指していることは知っていました。
その目的地がずっと遠くにあることも。
「アイドルにもメイドカフェで働いている方が多いんです。チェキを撮ることなどがアイドルと共通していると思いました」
語りながら他のお客さんの様子もきちんと確認する彼女。
短い期間でしたが、その間もこの場所で確実に成長したことが仕事ぶりから伺えます。
「配信で好きな方がメイドカフェで働いたらいいと言っているのを聞きました。だから私もやってみたいと」
初めて聞く彼女がこの場所にやって来た理由。少しずつお客さんが増えてきた店内。
もう一人のメイドさんも一生懸命に仕事をこなされていました。
そうした光景を見る度に、改めてメイドカフェの仕事は大変な仕事だと感じる私。時々考えます。
(こんなに大変なのに、どうして彼女達はこんなにも笑顔でいられるのだろう)
その答えの一つを彼女から感じました。
夢があるから。
勿論それだけではないのかもしれませんが、夢は自分の身体を動かす力になることを感じました。
否、思い出したと言う方が正しいのかもしれません。遠い昔、自分にも確かにあった気持ち。
いつからか、ただ生きることだけに囚われて忘れてしまった気持ち。向き合うのが憚られて、目を逸らしていた気持ち。
それを目の前の彼女は持っていました。
その姿で誰かの心を動かす人。人々はそのような人達を、時にこう呼ぶのではないでしょうか。
『アイドル』と。
コンパス
「小さい時は目立つのが好きでした。目立つのは気持ちいいって。ダンスをしていたこともあります」
彼女がお店に在籍中に、一度だけステージに立ったことがあります。
想定外のこともあったようですが、それを感じさせずにパフォーマンスを見せる彼女の姿は堂々としたものでした。
この日に備えてきた彼女の意気込みを感じると共に、これからの決意を感じさせるようなステージ。
いつか来る未来の第一歩に、私は立ち会うことができたのかもしれません。
目立つのが好き。
その言葉一つにも、自分が何が好きなのかにしっかり向き合っていた彼女の姿を見て取れました。
人は生きていく過程で多くの他者の言葉を聞きます。
それは思いやりを秘めた言葉かもしれませんが、時に自分の本音を他者の要望に置き換えてしまう時もある。
だけど彼女はどこまでもぶれない自分の意思を持っていました。
まるで、必ず望んだ方向を指し示すコンパスが心の中にあるように。
これから先もどうか、そのコンパスの針が動き続けることを願わずにはいられませんでした。
でも、そんな心配は杞憂かもしれません。
先程よりさらにお客さんが増え忙しくなった店内。そこでやるべきことをきちんとこなしている彼女の姿。
その姿勢があれば、どこにいてもきっと目指す舞台に行けるんだと私は思いました。
手が届くまで
「この店で良かったです」
笑顔で語られた言葉。短い期間でしたが、彼女がそのように思ってくれたことにお店の一ファンとして嬉しい限りでした。
夢は叶わないから夢だと、昔誰かが言いました。
それに納得する一方で、叶うまで手を伸ばし続けるなら叶わないということはないんじゃないかと思う私もいます。
大切なのは、いつだって『自分が何がしたいのか』。
彼女との出会いは、長く忘れていたことを思い出させてくれました。
誰かの生きる理由、誰かの心を支える存在。
アイドルという自分の夢でそれを目指す彼女。
人は誰でも、自分の夢で誰かの助けになれることを彼女は教えてくれています。
これから始まる彼女の新しい道。
いつかまたどこかで出会えることを願い、彼女の夢が叶うことを願います。
めるドナでのお給仕本当にお疲れ様でした。
新しいステージに向かって、行ってらっしゃいませ。