もう随分前の出来事です。
「私、しっかりしてますよね?」
彼女が同僚のメイドさんに尋ねました。
「いやあ…… そんなには」
「へっ?」
冗談半分だとは思いますが、同僚の返答に戸惑う彼女。そのやり取りを見ていて、私は何だかとても微笑ましくなりました。
今思うと傲慢かもしれませんが「これは彼女を見守ってあげなきゃ」という気持ちが芽生えました。
それから色々な話をしました。彼女が好きな本のこと、家族のこと、仕事のこと。
話をする内に、彼女はとても高いポテンシャルを秘めた方だと知りました。
だけどとても親しみやすくて、いつも彼女に会うことが楽しみです。そんな彼女の晴れ舞台、2020年11月29日。
福岡市天神にあるメイドカフェ「めるドナ」のアイドルグループ・MERUPUROの初ライブです。
メンバーの二人だけでなく、馴染みのある多くのキャストさんが出演した今回のライブ。参加することができて良かったと思っています。
妙だと思われるかもしれませんが、最初は少しだけキャストさんが歌う姿を見ることに照れる気持がありました。
私がカラオケにあまり行かないせいもありますが、例えば普段会話をするだけの同僚がカラオケで弾ける姿を初めて見た時の気持ち。
それまで知らなかった人の新しい一面を見て、それを受け入れるまでにかかる少しだけのタイムラグ。
そうした感覚なんですが「一体どんな感じになるんだろう」という気持ちが胸にありました。
そんな気持ちを、彼女達は見事に吹き飛ばしてくれました。全員歌がとても上手かった。
そして、盛り上げ方も凄く楽しくて、改めて彼女達の力を感じました。
メイドカフェの中にはステージを常設し、パフォーマンスとしてライブを提供する店舗もあります。しかし、めるドナにはそれはありません。
ですが、そうした環境であるにも関わらず彼女達の歌声はライブで披露されるに相応しい力を持っていました。
歌詞が飛べば補い合い、自分の出番を全うする。それは、普段メイドとして一生懸命に働く姿と何ら変わらぬ素敵な姿です。
一口にアイドルと言っても色々な形があります。
めるドナのキャストさんのステージを観て感じたこと。
それは、会場自体が一つの村社会を形作っているような感覚でした。観に行く、というよりそこにいる皆でステージで頑張る子を見守る。
これは、彼女たちが遠い存在だけでなく普段身近で会いに行ける存在だからこそ感じられることです。
ここには、自分が子どもの頃にはまだ残っていた家庭だけでなく地域で子どもを見守るという村社会の感覚を感じました。
観客だけが楽しむわけでなく、出演者も楽しめるように観客も盛り上げる。熱さを感じました。
ずっと会いたかった方にも会うことができました。その方にとっても今回は晴れ舞台で、その瞬間に立ち会えたことを嬉しく思います。
私自身も仕事をしているから感じますが、何かをしている上に別の何かをするというのはとても大変なことです。
彼女達もそれぞれの生活がある中で、このライブのために一生懸命練習した。
マルチタスクをこなすその姿は、見習わなきゃと思います。
このライブは、冒頭のいつも私に元気をくれる方の生誕も兼ねていました。
今日の主役である彼女。何度も出番があるのに、疲れた顔一つ見せない姿。
その気丈な姿にずっと心惹かれてきたのだと改めて感じます。
最初は「見守ってあげなきゃ」なんて思っていたのに、元気づけられていたのは自分の方だったなと。
いつだったか彼女が言っていました。
「小さなことにも幸せを見つけられるから、私はいつも幸せ」
そう語る彼女だから、こんなにもたくさんの人を笑顔にできるのだと改めて実感させられました。
「憧れられる存在になりたい」
男性からだけでなく、女性からも例えば「この人のメイクが可愛いから私も真似したい」と思われる存在になる。
ずっとその気持ちを持っていると私に語ってくれたことがあります。
メイドカフェで働こうと思ったのは、可愛いメイドに憧れがあったから。
何故、彼女と会う度に心が励まされるのかわかった気がします。
アイドルとは人の心に元気を与え動かす存在。あるいは、そういう生き方のことを呼ぶのだと私は思います。
「憧れに」真っすぐに突き進む姿。その過程で私達にはメイドとして、元気をくれる。
「頑張って」と背中を押すように明るい笑顔で。肩書ではなく、彼女はその行動で多くの人に元気を与える天性の「アイドル」です。
例えば太陽に照らされると影ができるように、自分より凄い存在がいれば自分の至らなさを感じる時がある。
だけど彼女の明るさは、そんな影さえ消してしまう強く輝く「明かり」です。
「もっとたくさん感謝の言葉を伝えていきたい」
自分があるのは自分だけの力ではないことを彼女は知っていました。
ですが思うのです。支えてくれる存在ができたのであれば、それは彼女が自分で掴んだ彼女自身の力なのだと。
改めてお誕生日おめでとう。どうか良い一年に…… いや、これからの人生がずっと良い日々でありますように。
一方でライブが開催できたのも、今までお店を守り繋いできたたくさんのキャストさんのお陰なんですね。
2020年、世界を襲った未曾有の事態。それでもお店はあり続け、この日も会場にはたくさんの観客が訪れました。
これは、キャストさんの力。今だけでなく過去から続いてきた歴史。
そう思うと感慨深いものがありました。
この日、会場にいた誰もがそれぞれに抱えているものがあるでしょう。それは他の誰にも見ることはできない。
まるで、月の明るい部分を見ることができてもその裏側を見ることができないように。
それでも、この日の彼女たちの姿を見てまた頑張っていこうと思えました。
舞台に立った方だけではありません。
他のメイドさんも、スタッフとして参加された方も、お店で料理を作ってくれる方も皆が誰かを支えるアイドルです。
人に夢を見せるのがアイドル。その受け取った夢をどう活かしていくかは、受け手の私達に委ねられている。
素敵な時間をありがとう。今日もらった夢は、また明日からの活力に変えて頑張ります。
皆本当にお疲れ様。そして今日という舞台を精一杯頑張ったMERUPUROのお二人、ありがとうございました。
MERUPUROを知りたい方へ
MERUPUROのお二人が動画を投稿されました。 ライブの裏話が盛りだくさん! 是非、とっても魅力的な二人のお姿に触れてみてください。 きっと、会いたくなりますから。