「私前から思っていることがあるんです。ヒカリ隊員のことで」
放送情報
タイトル:「ウルトラの星へ!! 第1部 女戦士の情報」
放送日:1980年3月5日
脚本:吉川惣司
感想
冒頭、夢にうなされ基地の設備で土星を見るヒカリ。
ゴンドウキャップはその姿から何かを感じ取る。
ついに始まったヘラー軍団の総攻撃。
ザ☆ウルトラマンの世界ではこれまでも世界規模で侵略者の攻撃があった。
しかし、ヘラー軍団の物量はこれまでの侵略を上回る。
それまでのウルトラシリーズ最終回では怪獣単体の強さを強調していたが、敵の物量を優先的に描いたのはアニメならではのメリット。
しかも、これまで科学警備隊は世界を股にかけて活躍していたので世界規模の組織という描写に無理がまったくない。
ウルトリアでヘラー軍団を撃退する科学警備隊。
追跡中の円盤が突然爆発し不時着する。
「包囲して一人も殺すな」と指示するゴンドウキャップ。
宇宙船から出てきたヘラー軍団の兵士たちは何と爆弾を抱えて特攻してくる。
ヘラー軍団の残虐さはこれまでも様々に描写されてきた。
彼らが元々はウルトラ人であったことを思えばショッキングな場面。
だが、ザ☆ウルトラマンではウルトラ人にわざわざ地球人と同じ姿を持たせてまで彼らの様子が描かれている。
そこに描かれていたのは穏やかで勇気を持ち、恋もする人間の姿であった。
ヘラー軍団の特攻の描写も、ウルトラ人と対になる「人間」を描いた姿と考えられる。
宇宙船の中に密かに潜入していたアミアは38話以来の登場。桜田長官とは初対面となる。
アミアからヘラー軍団が土星に前線基地を作っていることを知らされる科学警備隊。
土星と聞いてゴンドウキャップは思うことがある。
基地に迎えられるアミア。考えてみればウルトラ人を、正体をわかった上で地球人の部屋で休ませる何てすごいことだ。
日常的な描写だが、それが宇宙規模のスケールの本筋と直結している。
密かに再会するヒカリとアミア。
森の中という場所がU40の美しい自然を思い出させる。
タイターン基地攻撃はエレクが考えた作戦。U40でも戦いが続いている。
きっとウルトラマンタイタスも戦っていたのだろう。
最高会議が開かれ対策が話し合われる。
ウルトリアを土星に向かわせることに反対する各国防衛軍の首脳たち。
世界中がやられている状況を考えれば地球の守りを優先する気持ちはわかるが、根本的な問題の解決にはなっていない。
反論するゴンドウキャップに「解任する権限もある」と迫る首脳たち。
彼らの態度の裏側にあるのは「恐れ」だろう。
最高会議後のゴンドウとムツミのシーン。
ムツミはヒカリ隊員について前から思っていることがあると告げる。
マルメが指摘する「ヒカリは肝心な時にいなくなる」という状況。
ゴンドウはそれ以上言うなとムツミを制する。
もうこの時点で二人とも完全に気づいている。
小さなポイントだが、ムツミの台詞で「マルメ隊員が」と言っているのが大事なところ。
これまでの話の描写がきちんと活かされているところに一年のシリーズの積み重ねを感じる。
再び始まったヘラー軍団の攻撃を迎え撃つウルトリア。
出撃の際に防衛軍首脳の一人が「これだけは手放すわけにはいかん」と呑気に語るがあんたの物じゃないと画面に叫びたくなる。
密かにウルトリアに忍び込んでいたアミア。
これまでもそうした行動が多かったアミアだが、今回ばかりは彼女も傍観者のままではいられないのだろう。
敵の旗艦に捉えられるヒカリとアミア。ヒカリはカプセルに閉じ込められる。
ヘラー軍団はジョーニアスのことは知っていても、そのジョーニアスがヒカリだというところまでは調査が及んでいない。
元ウルトラ人たちなので地球人と一体になれることは知っていると思うが、まさか目の前の人間の中にジョーニアスがいるなど思いもしないのだろう。
カプセルの中で変身するヒカリ。
ジョーニアスの腕や足が宇宙船の中を突き破って巨大化する場面は見どころの一つ。
今ならこういう場面も実写でできるだろうが、当時の技術では表現するのが難しい。
怪獣が出てこない本話でも、こういうダイナミックな場面があることで視聴後の満足感が生まれる。
アミアを救出し旗艦を撃破した後に科学警備隊は最高会議の決定を押し切って土星のタイターン基地へ向かう。
とんでもないことをしているのに隊員の誰一人反対しない。
最前線で戦い続けウルトラマンの活躍を誰よりも知り、ウルトラ人と交流してきた彼らだからこその選択だろう。
ゴンドウの言葉を穏やかな表情で見つめる桜田長官が印象的。
この人が長官で良かった。
そういえば、宮井副官は登場していないがどうしたのだろう?
まあ、あまり有能そうでないので何かの理由で降格されたのかもしれない。
本話で描かれるウルトリアに依存する各国防衛軍首脳の姿。
それが実は後に描かれるジョーニアスを頼りにする科学警備隊の姿に通じる物がある。
それを科学警備隊がどう克服していくか。それがザ☆ウルトラマン最終章の見どころ。