「私たちのことをなぜ最後まで隠さねばならなかったかわかってくれただろうね」
放送情報
タイトル:「ウルトラの星へ!!完結編 平和への勝利」
放送日:1980年3月26日
脚本:吉川惣司
登場怪獣:処刑怪獣マグダター
感想
ザ☆ウルトラマンも今話が最終回。
ヘラー軍団との決着が描かれるとともに、一年かけて描かれてきたヒカリとジョーニアスの秘密を隠さねばならなかった理由に答えが与えられ最後を締めくくるに相応しい話となっている。
原子分解されてしまう大賢者をただ見ていることしかできなかった科学警備隊。
辛くも脱出に成功する中で、マルメ達がヒカリがウルトラマンだと思っていたことを口にする。
「そんなことは問題じゃない」
「ウルトラマンに頼りすぎていた」
隊員たちをゴンドウキャップが諌める。
この言葉にもっとできることがあったのではないかと思い直す隊員たち。
科学警備隊はバラバラに散ってゲリラ戦でヘラー軍団に勝負をかける。
初代ウルトラマンから描かれてきた「ウルトラマンへの依存」というテーマ。
アニメということで触れていない方もいると思うが、このテーマはしっかりとザ☆ウルトラマンでも描かれている。
確かに、もしヒカリがジョーニアスに変身できていたとしたら大賢者の救出はできただろう。
しかし、最高会議の決定を押し切ってまでU40にやってきた科学警備隊の本当の自立には繋がらないのだ。
もしもこの場にいたのがゴンドウではなくアキヤマだったらどうだったか。
個人的な予想だが大賢者救出に関して最後までできることを探したのではないかと思う。
アキヤマより若いゴンドウだからこそ、ウルトラマンに依存する未熟な部分が自然に描けたのだと感じる。
そして始まる科学警備隊の戦い。
前話でも感じたことだが科学警備隊の面々は本当に強い。武器がなくなれば素手でヘラー軍団の兵士を圧倒している。
もしこのメンバー全員がウルトラマンに変身したとしたらとんでもないことになると思う。
別れの挨拶をかわす演出が泣ける。
前作のウルトラマンレオではMACが途中で全滅したのでこのような演出はできるものではなかった。
似たシチュエーションでは帰ってきたウルトラマンの最終回で単身MATアローで出撃する郷隊員がメンバーに最後の挨拶をするシーンがあった。
こういう場面があるだけで、内容に子ども騙しといった感じはなくなるのだと気づかせられる。
奮戦むなしく次々捕まる隊員たち。
そんな中ヒカリとゴンドウは防衛タワーに潜入する。
一方、エレクたちの援護に向かったジョーニアスは宇宙のヘラー艦隊を撃破していた。
一番重要な局面で活躍するのをヒカリにすることで彼のヒーロー性が保たれている。
これまではいざとなればジョーニアスの力があったが、今はそれがない。
こういう状況だからこそ、「自分たちにできること」という面が強調され最終回のテーマに深みが出ている。
防衛タワーの破壊に成功したがタワーから連絡してしまうヒカリ。
そこに間一髪ジョーニアスがヒカリと融合する。
人間としてできる最大限の努力をした時にウルトラマンがやってくる。
視覚的にも文字通りそれを体現した場面であり、ここから物語はどんどん盛り上がりをましていく。
捉えられた科学警備隊の前に出現する処刑怪獣マグダター。
ザ☆ウルトラマン最後の怪獣だ。
注目すべきはマグダターの出現シーン。
捉えられた科学警備隊のを見下ろすように地面からマグダターが出現する構図は怪獣の巨大さを見事に表現している。
アニメである故に実写ほどの迫力がないといわれるザ☆ウルトラマンだが、逆にアニメだからこそ怪獣と人間が同時に映る場面に違和感がない。
技術的にも、まだまだ当時こういう場面を実写でやろうとしたら違和感は出てしまっただろう。
アニメであったとしても、見せ方次第で十分怪獣の迫力を出すことはできるのだ。
気絶から目覚めたヒカリはジョーニアスに変身。
遂にヒカリの真実を目撃する科学警備隊。
マルメの顔の嬉しそうな顔が印象的だ。
ピグによって助けられる科学警備隊。ピグにもきちんと活躍の場を設けてあって嬉しい演出。
マグダターに苦戦するジョーニアスを助けにエレクとロトが現れる。
最終回に登場する怪獣にしては残念ながらあまり個性を感じられないマグダターだが、ジョーニアスが単身では負けそうになることで辛うじて存在感が出ている。
追いつめられるヘラーだが、大賢者とウルトラマインドは自分の手中にあると巨大要塞ヘラーシティを浮上させる。
逃亡を図るヘラーだが、突入してきたジョーニアスのパンチに吹き飛ばされる。
アミアも救出され、彼女は大賢者の復活を。ジョーニアスはウルトラマインドの奪還を行う。
エレク、ロトに続いてアミアにもちゃんと見せ場が作られている。
改めて見直して気づいたのだが、本当にキャラクター全てに見せ場が用意されているため飾り物になっている人物が一人もいない。見事な構成だ。
大賢者は復活しヘラーはヘラーシティの爆発に巻き込まれて死亡。ついに長かった戦いに終止符が打たれる。
大賢者の演説を聞くウルトラ人と科学警備隊のメンバー。
そしてついにジョーニアスが人間体でヒカリと対面する。
その顔立ちは強さと優しさに満ち溢れた顔立ちだ。
一心同体でありながらこれまで決して顔を合わせることができなかった二人の握手の場面は一年間の放送を飾るに相応しい名場面。
かってこれほどまでに主人公とウルトラマンの繋がりを感動的に描いた作品はなかった。
近いところではゼットンに破れた初代ウルトラマンがハヤタを生き永らえさせてほしいとゾフィーに願った場面がある。
ウルトラマンとハヤタの繋がりを感じる場面だが、今作で描かれたヒカリとジョーニアスの描写はそこから一歩踏み込んだものになっている。
ウルトラ人の円盤で地球に帰還する科学警備隊。
平和な様子をもう一度見るためにジョーニアスとアミアも地球を訪れる。
ヒカリと分離し、自分だけの目で地球を見つめるジョーニアス。
地球を美しいとジョーニアスがいってくれるが、地球人にはジョーニアスが命をかけて守り賞賛してくれたこの星を守っていく責任がある。
ザ☆ウルトラマンの物語はヒカリの物語であると同時に、地球人がジョーニアスから試される物語でもあった。
自分たちのことを何故秘密にしなければならなかったかヒカリに尋ねるジョーニアス。
ヒカリは「誰もが自分の力を信じるべきだから」と答える。
ここに、ザ☆ウルトラマンのテーマは全て描かれた。
同時にこの場面は、ヒカリとジョーニアスが真に対等の立場になった場面といえるだろう。
そしてもう一つのラスト、ヒカリとアミアの別れ。
ムツミ隊員に幸せにと言って去ってゆくアミア。
ヒカリとムツミ隊員は一緒に過ごす場面も多かった。
二人が結ばれるかはわからないが、アミアの思いやりに感動する場面だ。
過去にウルトラセブンでは主人公がウルトラ戦士だったが、今作ではその逆のパターン。
アミアとヒカリの恋は丁寧に描かれてきただけに、星や種族の垣根を越えて愛が芽生える描写が作品に気高さを与えている。
もう二度と会えないのかというヒカリの問いに宇宙に危機が訪れた時に戻って来るというジョーニアス。
例えヘラー軍団が滅んだ後も宇宙から脅威が消えたわけではないし、地球を狙う侵略者も後を絶たないだろう。
戦いはこれからも続いていく。
再会へのかすかな希望を抱かせる言葉はウルトラマンの世界観だからこそ包括できる言葉だ。
エンディングテーマ「愛の勇者たち」が流れる中去っていくジョーニアスとアミア。
次にウルトラマンになるのは君かもしれないというナレーションで物語は締められる。
あらゆるテーマ、人物描写を過不足なく描き出し作品に一貫性を持たせた最終回だった。
個人的な希望をいえば、これまで散々ヒカリを非難してきたマルメがヒカリに謝罪する場面を入れてほしかった。
ウルトラマンが現れた時のマルメの嬉しそうな顔から、ヒカリへのわだかまりが溶けたことを信じたい。
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