作品情報
サブタイトル:「わしら純情放火団」
放送日:1991年3月24日
監督:小西通雄
脚本:扇澤延男
あらすじ
純が出会った老人・岡田。定年退職後、再就職を目指していた岡田が訪れた会社は放火を仕事と説明する老人だらけの会社だった。
感想
この作品は子どもの頃リアルタイムで観た記憶があります。といっても内容は覚えてなくて、須藤が顔の皮を剝がす部分をよく覚えてるんですよ。
そのインパクトでしょうね、何年経ってもそこだけはずっと忘れなくて。
そして内容なんですが…… いやあ、ちょっとこれは問題作でしたね。
扇澤先生は本当に大好きな話をたくさん書かれてる脚本家さんなんですが、この話に関しては粗が目立っていたと思います。
最初、岡田老人が憎しみの対象にしてたのは「若者」だったはずなんですよね。
それが須藤と出会い、その対象が「腐った日本」にすり替わってる。
岡田は40年間「無遅刻・無欠勤」だったにも関わらず送別会もなかったと不満を口にしていました。
でも、こんな簡単に犯罪に自らの意思で加担しちゃうところを見ると岡田自身にも問題があったんじゃないかと思っちゃいました。
その須藤の目的も実は自分の人生を滅茶苦茶にした悪徳不動産王・桜木への復讐。
それを知ってもなお「自分たちのために」と放火に協力する岡田と老人たち。
う~ん‥‥‥ 要するにこの人たちは大義名分や信念なんかどうでもよくて、ただただ酷い目に遭ってきた憂さを晴らす対象を求めていただけではないでしょうか?
そんな感じなので、ラストで岡田がしみじみとした台詞を語っても凄く薄っぺらく思えました。
最終的に腐った日本の象徴=桜木となったんですが、桜木ってどう見ても岡田と同じくらいの年齢ですよね。
それ故に、どうしても憎しみの対象が若者⇒老人へと超飛躍してるのが目立っています。
ラストで純が「なぜ真面目にやってきた岡田に手錠を打つことになったのか」と正木本部長に詰め寄ります。
応えない正木。物語は純の辛い心情をナレーションが語り終わりを迎えます。
でもはっきりいって、こんな事態になったのは自分達の憂さを犯罪という形で老人たちが晴らそうとしたからでしょうと。
勿論そこには勧誘した須藤の存在があり、そんな須藤を作り出したのは桜木です。
こういう、まるで一つ一つのボタンが組み合わさって不幸な運命を招いたという構成は読み取れるんですよ。
でも、やむにやまれぬ事情からとかじゃなくてノリノリで放火に手を染める老人たちは弁護の仕様がない。
もしかして、正木本部長が何も言えなかったのはそのことに気づいていたからではないかと思いました。
岡田たちを善人と思い込んでいる純には、どうしてもそのことを伝えられなかったのではないかと。
純の言葉で岡田の心は救われたかのように見えるけど、これって純が刑事だから言えること。
何か、岡田の救いを描くなら純以外の第三者がいないといけなかったように思います。
でないと、岡田は永遠に自分の憂さを犯罪に手を染めることで晴らす人生を送るんじゃないかと。
結局、須藤は死亡。ソルブレインは一度も生前の須藤とは会えませんでした。
心を救うべきだったのは須藤だったと思いますが、それだと話の焦点がぼやけてしまう。
この辺りはシナリオを書く難しさを感じました。
個人的な希望として、できるなら岡田と関わるのは純でなく大樹か玲子であって欲しかったと思います。
まだまだ二人の物語が少ない状況。こういう事件を経験すると、完璧人間だった香川竜馬と違った個性を大樹は印象付けられたんじゃないかと感じました。
玲子にしてもそうで、活躍の多かったウインスペクターの藤野純子と比べると印象が弱いので事件を通して悩めるエピソードで印象を強めて欲しかったですね。
その辺りに関しては、後のウインスペクターがゲスト出演するメサイア編で描かれることになるのですが。