『伝説の勇者ダ・ガーン』に登場するグレートダ・ガーンGX。
主役ロボであるダ・ガーンXと同格のロボであるガ・オーンの2体が合体した地球側の最強勇者ロボである。
しかしながらこのグレートダ・ガーンGXは他作品の最強ロボと比べると、弱いという印象を持たれやすいロボだ。
実際作中では物語が後半になるにしたがって、単体で敵を倒す描写が少なくなり一方的に苦戦する場面が多い。
それ故に弱いという印象を持たれがちがだが、これは本作の構成にも原因がある。
『伝説の勇者ダ・ガーン』は前作である『太陽の勇者ファイバード』及び『勇者エクスカイザー』と比較して、ストーリーの連続性に重点が置かれている。
1話完結がメインで主役ロボが敵にとどめを刺す展開が多かった前2作。
対して1話だけでは話が終わらないダ・ガーン。
だからこそ必然的にグレートダ・ガーンGXが毎回敵を倒して終わるというパターンが使えないのだ。
グレートダ・ガーンGXの不遇はこれだけではない。
ライバルとして登場した敵ロボットのレッドガイスト。
このレッドガイストが強すぎるのだ。
本来ライバルキャラとは主役と同じくらいの強さを持っているからこそ魅力が際立つ。
しかしレッドガイストの強さは、明らかにそこから逸脱している。
グレートダ・ガーンGXがまるで歯が立たない強さ。
恐ろしいことにこの強さのレッドガイストでも、敵の中でも立ち位置はナンバー3の強さなのだ。
ダ・ガーンのラスボスは正体不明の宇宙の怪物・オーボス。
その下に腹心の部下であるドラゴン型の生命体・シアン。
その下がレッドガイストである。
レッドガイストに歯が立たないグレートダ・ガーンGXは、当然のことながらシアンにも手も足も出ない。
ダ・ガーンの敵がこれほどまでに強く描かれているのは、オーボスの侵略が本気であるということを表現したかったためと考える。
よくグレートダ・ガーンGXが弱いのではなく敵が強すぎるといわれるが、本当にその通りだ。
これまで宇宙中を侵略してきた敵が本気を出した時、ほんの数体のロボットに歯が立たないのはそちらの方が不自然だ。
ある意味ダ・ガーンとは物凄くリアリティを持った作品だった。
前置きが長くなったが、グレートダ・ガーンGXが弱く見えるのはダ・ガーンという作品がストーリー性を重視したことが大きい。
それまでと違った作風を目指した割を食ってしまったといえる。
一方で作品世界の視点から考えた場合、グレートダ・ガーンGXが弱く見えるのはこの形態が不完全な姿だったためと考えられる。
グレートダ・ガーンGXへの合体は、ダ・ガーンXとガ・オーンのピンチにほんの僅かに発動した伝説の力によって可能となった。
つまり、ある意味ではグレートダ・ガーンGXとは伝説の力の一端が形になったものといえる。
しかし、それはあくまで一端なのだ。
ダ・ガーンの最終回では完全に発動した伝説の力により、グレートダ・ガーンGXに全ての勇者ロボのエネルギーが一体となって『ダ・ガーンGX』という姿が誕生した。
作中では奇跡の姿のように描写されているが、実はこの状態こそグレートダ・ガーンGXの本来の姿だと私は考える。
地球の勇者ロボのエネルギーが全て一体となってこの形態になったことから、彼らの自身もまた伝説の力の一端だったのではないか。
それぞれが力の一端であり、不完全な状態であったからこそオーボス軍団に敵わない。
他の作品に登場する主役ロボが単体で完結した強さを持っていることに対して、ダ・ガーンがその強さを得るためには伝説の力の発動が必要不可欠。
つまり他の勇者とグレートダ・ガーンGXの強さを比較するならば、ダ・ガーンGXの状態で比較して初めて公平であるといえるだろう。
グレートダ・ガーンGXはオーボス軍団の前では確かに弱かった。
しかし理由もなく弱いわけではない。
作品の外と中で、常に本来の力を抑えられながら戦っていたのだ。
そう思った時、例え敵わないとわかっていても隊長である高杉星史の命令があれば『了解』の掛け声と共に戦いに挑んでいくグレートダ・ガーンGXの姿に気高さを感じずにはいられない。
主役ロボが弱く見え、なおかつその作品が弱さを売りにしていないなら致命的な問題だ。
しかし、だからこそ見方を変えた時に見えてくる魅力もある。
グレートダ・ガーンGXは、強さ以上にその心に魅力を備えたシリーズの中でも一風変わった位置にいる存在だったのではないだろうか。