ネコはミカンを片手に夜明けを待つ

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「夏への扉」紹介 映画化も決まったSFの古典 普遍のテーマ

こんにちは、管理人の侑芽です。

2021年に山﨑賢人さん出演で映画化が決まった「夏への扉」。

原作は古典SFの名作と呼ばれていますが、古い作品故に読んだことのない方も多いでしょう。

本作は「タイムトラベル」を題材に描かれた小説です。

ドラえもん」にタイムマシンが登場してのび太達が過去や未来の様子を見に行ったりします。

夏への扉」はそうした後の作品群に強い影響を与えたといわれています。

どちらかというと軽く読めるタイプの小説なので、映画が公開されるまでの間に原作を読むのも楽しいと思いますよ。

作品紹介

小説「夏への扉」は1956年にアメリカで発表されました。

作者はロバート・A・ハインライン

SF小説の大御所と呼ばれる人物の一人です。

代表作である「宇宙の戦士」は「機動戦士ガンダム」をはじめとした日本のSFアニメにも影響を与えたといわれています。

「親友と恋人に騙された発明家の主人公が未来と過去を行き来しながら、最後には幸せになる」

これが「夏への扉」のストーリーです。

タイムトラベルが題材ですが物語の範囲はどちらかといえば狭い方で、全体的にこじんまりとまとまった印象です。

それ故に、コアなSFファンというより大衆向けの小説として読みやすいものとなっていました。

また、作品には主人公の飼い猫が登場します。

執筆当時、作者のハインラインが猫を飼っていました。

その観察から考え出したであろう主人公と猫のやり取り。これが相棒感がよく出ていて作品に小気味いいリズムを与えていました。

あと、多分読む人がとっつきにくいと感じるのが「文化女中器」など本作独自の機械の表現だと思います。

私はそれに苦しんだので、作品で使われる機械の意味を記しておきます。

文化女中器
自動床掃除機。今でいう「ルンバ」のようなものと考えて差し支えないです。

万能フランク
学習させたことは大体できるとされている家庭生活全般をサポートするロボット。有能なドラえもんとイメージして差し支えないです。

勤勉ビーバー
2020年に普及していた万能フランクの発展型ロボット。

感想

本作が名作と呼ばれていることを知っていましたので、では何がその理由なのかを考えながら読みました。

読み終わって感じたのは、これは「名作」というより「好きだと答える人が多い作品」なのではないかと。

というのも、結構全編に渡ってご都合主義が多いんですよね。

主人公・ダニエル(通称ダン)は色々なピンチに合いながらも不屈の精神で事態に挑んでいきます。

だけど、そのピンチの切り抜けに「たまたま」が多い気がしたんです。

勿論それは物語を進める上では便利な潤滑油になるんですけど、それが続くと「こんなことあり?」とちょっと拍子抜けしちゃう部分もありました。

逆にいえば、ある程度力技で展開が進むからあまり肩に力を入れなくても読める作品です。

また、現実の2000年を経過した後となっては「夏への扉」の中で描かれる未来世界に違和感を感じるかもしれません。

もともとの物語のはじまりは1970年。ダンがたどり着いた未来は2000年と、今読めばかなり過去の時代が舞台となっています。

小説が発表されたのが1956年だったことを考えれば、2000年というのは遠い未来だったのでしょう(今から50年後を想像しろと言われたら遠く感じますね)。

ただ、ところどころ現実にも存在する機械を彷彿とさせるダンの発明品も作品に登場します。

そこは現実が空想に追いついたことを感じられた「おっ!」となりました。

写真はピート…ではなく、道端で会った野良猫氏。

夏への扉」は猫が登場する小説の代表作ともいわれています。

ピートというのがダンが買っている猫の名前です。

なかなか人情味溢れる猫で魅力的ですが、実は全体で見ればピートの活躍は多くありません。

その辺りが批判を受けているんですが、猫小説の代表作って後付けの評価だと思うのであんまり気にすることでもないと私は感じました。

むしろ、長く登場しなかった分ために溜めて登場した時の存在感が良かったです。

ピートが登場するとその場面がすっごく明るく感じられるんです。

この辺、猫が恐怖の存在だったスティーブン・キングのホラー小説「魔性の猫」と実に対照的でした。

この小説を読むにあたっては、SF小説としてでなく人間ドラマとして読むのが楽しいんじゃないかと思います。

ダンを絶望の底に追いやったのが人間なら、ダンを救ったのもまた人間でした。

未来から過去に戻ってきたダンはヌーディストの夫婦と知り合うんですが、彼等の誠意にダンは助けられます。

この夫婦が実にいいキャラクターをしていて、ダンじゃなくても人間っていいなと思えるんですよ。

一見SF作品ではありますが、本作のSF的要素は人間ドラマのための材料。それが読んで感じたことです。

ハインラインが描きたかったのは「どれだけ科学が進んだとしても人間が生きていくために必要なものは人間同士の信頼」というテーマ。

夏への扉」が多くの人に支持されるのはこうした部分ではないでしょうか。

本音をいうと、実は最初から最後まで読んでも自分の中ではあまり「のれない」小説でした。

絶望の淵から主人公が立ち上がる物語には通常熱いものを感じるんですが、ダンがかなり幸運な主人公なのであまり「熱」が伝わってきませんでした。

でも、アイデア自体は最初のウルトラマンと同じでいつの時代にも通用するものだと思うし、時代を最近に移した映画版は観てみたいと思いましたね。

あとタイムトラベルと男の主人公と猫ってやっぱりドラえもんを思い出して、どっかでは影響あったのかなと考えると親しみは持てました。