ネコはミカンを片手に夜明けを待つ

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「ジョジョの奇妙な冒険第一部・ファントムブラッド」 ホラーの意味と黄金の精神について ジョジョに通じる映画も  

個人的なことで恐縮ですが、近場でジョジョ関連のイベントが開催され行ってきました。まるで虹の中にでも入り込んだような強烈な色・色・色の連続!

もともとコミックの表紙やアニメなどでカラーの絵を見てはいたんですがやはり大迫力でした。

ジョジョとの出会いは小学生の時に友達が持っていたのを見せてもらったことです。

ずっと読み続けるまではいかなかったのですが、記憶に強烈に残りました。

本格的に好きになったのは数年前の3部のアニメを見た時です。

ご存知のようにジョジョの奇妙な冒険は2020年まで8つの部が描かれています。

どの部もそれぞれ面白いんですが、やはり私の中で一番印象が強いのはジョジョとの出会いとなった第一部です。

人間を吸血鬼に変える石仮面というアイテム。それにより生まれたディオをはじめとする怪物たちは子供心に恐かったです。

ホラー映画ファンである原作者・荒木飛呂彦先生の持ち味がこれでもかと活かされています。

しかし第一部で描かれているホラーとはそうした怪物要素だけなのでしょうか?

今改めてジョジョで描かれるホラーとは何かを探り、後の部でも描かれる「黄金の精神」の意味を第一部から考えたいと思います。

作品紹介

タイトル:ジョジョの奇妙な冒険 Part1 ファントムブラッド

作者:荒木飛呂彦

作品概要:週刊少年ジャンプ1987年1・2号~46号連載

単行本概要:単行本全5巻、文庫版全3巻、 函装版全3巻

主人公:ジョナサン・ジョースター(通称 ジョジョ)

怪物たちから感じたホラー要素

まず第一部をはじめて読んだ子供の私は、一話の冒頭から恐かったです。

謎の部族が儀式をしていて石仮面を被った男が出てくる場面ですね。そうした絵面も恐かったしいったいこれは何のお話なのかまったく想像できない恐さもありました。

その後は周知の事実としてディオが吸血鬼になって、さらに多くの怪物を作り出していく展開になるんですがその辺りにもいくつもの恐さがありました。

それまで私は漫画というとドラゴンボールとかコロコロコミックで連載されていた漫画くらいしか知らなかったので派手な人体破壊の描写のあるジョジョは衝撃的でした。

吸血鬼になったばかりのディオが警官を次々殺害する場面に恐怖しました。

同時に、それまで普通の人間だったディオが人間じゃないものになったという事実も恐かったです。

私は特撮ヒーローが好きなんですが、その中の一つ「ウルトラマンシリーズ」には人間が怪獣になってしまったという話がいくつかあります。

それはそこまで恐く感じたことはなかったんですがディオは恐かった。

この違いは多分直接的な人体破壊描写があるかないかの違いだと思うんです。

古代のいわくつきのアイテムだったりそれから生まれる怪物だったり古典的な恐さが第一部には漂っています。

少年ディオから感じる理不尽の恐さ

本当の怪物になってしまったディオ。

もちろんそれは恐くはあったんですが、それよりも印象的なのはディオがまだ少年でジョジョの家に来たばかりの頃ですね。

もう本当に悪知恵が働くというか何というか、あの手この手を使ってジョジョを孤立させ全てを奪おうとするディオ。

それにまったく太刀打ちできないジョジョ。読んでいてジョジョが可哀そうになります。

ある時、この少年時代の話を読み返しているうちにふと気づきました。

いきなりこんな理不尽が始まって終わりが見えないって滅茶苦茶恐いホラーじゃないか!」と。

ディオは彼の父親とジョジョの父親の縁があってジョジョの家にやってきました。

ジョジョからしたらそんな親同士の因縁なんて関係ないんですよね。
にも関わらずひたすら酷い目に合わされる……

例えるなら殺される理由も無いのにホッケーマスクを被った殺人鬼に追っかけられるようなものです。

自分には何も非がないのに理不尽な目に合う。

この頃のディオは普通の人間でしかもまだ子供ではあるんですが、表立って本性を見せていない分尚更恐い。

人間だからやっつけて終わりというわけにもいかないですしね。ジョジョの立場を自分に重ね合わせたら絶望するしかありません。

逆に怪物になったあとの方がディオに対しては「これでこいつはやっつけていい存在なんだ」と思えるようになって安心した部分もあったと記憶しています。

ある意味では人間の頃より恐くなくなりました。

理不尽…… どうやらこれがホラーを考えるキーワードになりそうです。

本当に恐いもの

私が行った長崎の荒木飛呂彦原画展の音声解説で荒木先生自身が「一番恐いのは何代も前の世代の因縁が襲ってくること」と解説されていました。

そのコンセプトは特に第3部が顕著なんですが、1部でもジョジョの父からジョジョという形で身に覚えのない因縁が伝わっています。

現実の世界でも親からの因縁という形ではありませんが、身に覚えのないことで家族や同僚に責められた経験が誰にも一度はあるのではないでしょうか?

もちろん、自分に非があって酷い目に遭う場合もありますが何の前触れもなく詐欺や事故に遭うことも現実ではあります。理不尽です。

物語全体を通して描かれる理不尽な運命。それこそが怪物たちよりさらに恐ろしい本当の恐怖のように私には感じられます。

黄金の精神とは

ジョジョを代表するキーワードが「黄金の精神」です。

第4部で初登場した言葉ですが、それ以前の部も含めて主人公たちをはじめとした正義の人物たちを表す言葉として使われています。

荒木先生自身が様々な場所で語られいますがジョジョの奇妙な冒険の登場人物たちはみんな前向きです。

普通の物語だと身に覚えのない運命がやってきたら主人公は「何で僕がこんな目に」って悩むと思うんです。

だけどジョジョに関しては気持ちいいくらいそれがない。

ディオが吸血鬼になった時にジョジョがやったことは何か。それは「真正面から戦う」でした。

そうです、目の前で信じられない力を使って暴れるディオに対してです。

もちろんここでジョジョが逃げちゃったらお話にならないんですが、リアルに考えればこんな状況逃げたって誰も文句は言わない…… 

というより逃げるのが普通の選択ですよね。

でも逃げない。それは他の部の主人公もそうで本当に誰一人「何で俺が」なんて言わない。

優しさとか思いやりとか黄金の精神に含まれるものはたくさんあると思うんですが、改めて一部を読み直すと「理不尽な運命に勇気を出して立ち向かう」というのが黄金の精神の源流なのかなと感じました。

この映画もしかしてジョジョに影響してる?

ハロウィン」というホラー映画があります。

シリーズ化もされた有名な作品で作品名は知らなくても作中に登場する「ブギーマン」という殺人鬼の名前は聞いたことがある方もいるのではないでしょうか?

このブギーマン、無差別に人を殺しているように見えて実は自分の血縁者を殺すという目的のために行動しています。

第一部のジョジョのように親同士の因縁というわけではありませんが、自分のあずかり知らぬところで理不尽な因縁がやってくるという部分はどことなくジョジョに通じる部分を感じます。

ハロウィンがジョジョに影響を与えたのかどうかはわかりませんが、ホラー映画を観る時に理不尽な因縁をキーワードとして観てみると、もしかしたらジョジョに通じるものを発見できるかもしれません。