ネコはミカンを片手に夜明けを待つ

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ウルトラマントリガー第1話『光を繋ぐもの』感想 〜ティガ世代としてトリガーに期待〜

はじめに

『ウルトラマンティガ』が放送された時私は小学3年生だった。

グレート、パワードとビデオ展開された新作を経て出会ったティガは、私が「初めて出会った新しいTVシリーズのウルトラマン」である。

そのティガの真髄を受け継ぐ作品と謳われているのが『ウルトラマントリガー』だ。

リアルタイムでティガに出会い一年間その戦いを見守った人間として、この新しいウルトラマンの物語を最後まで追いかけていきたい。

放送データ

タイトル:光を繋ぐもの

登場怪獣:カルミラ、ゴルバー

放送日:2021年7月10日

監督:坂本浩一

脚本:ハヤシナオキ

あらすじ

人類が火星に進出した時代。火星で植物学者として働いているマナカケンゴの前に、闇の巨人『カルミラ』に操られた怪獣『ゴルバー』が出現する。世界的企業『シズマ財団』の会長であるシズマミツクニから、謎のアイテムである『GUTSスパークレンス』を託されるケンゴ。火星の地下遺跡に隠されていた巨人の石像をカルミラが襲う時、ケンゴは石像と一体化しウルトラマントリガーに変身する。

感想

新しいヒーローの誕生エピソードとして、比較的オーソドックスにまとまった1話だと感じた。

理由はこの1話が主人公・ケンゴの物語として展開されたからだ。

具体的には前作『ウルトラマンZ』の1話が主人公・ナツカワハルキとウルトラマンZという2人の視点で展開されたのに対し、トリガーの1話は終始ケンゴ1人の視点で物語が描かれている。

突き抜けた印象こそないものの、いくつもの謎を提示することで次回への期待を高めることに成功していたと思う。

 

みんなを笑顔にしたいというケンゴ。既に職業に就いているからか、目標が明確になっているのはいい。

ウルトラマンの1話はウルトラマンと主人公の出会いが山場である分、どうしても主人公が状況に振り回される形になりやすい。

だからその前に、主人公のキャラクターを視聴者に印象付けておく構成は良いと思った。

ただその弊害で、遺跡に向かう前の場面で独り言のような説明台詞がやや不自然な印象も与えているのだが。

 

このケンゴだが、手が光ったりバリアを張ったりと最初からただ者ではないことが描かれている。

ケンゴの母もシズマ会長もそのことに何か思うことがありそうな雰囲気。

本作ウルトラマンの正体を最初から何人かの人間が知っているパターンになるのだろうか。

だとしたらケンゴの秘密とは何なのか? これも今後への謎である。

浮いた感じの説明的な台詞を話すケンゴの描写も、もしかしたらケンゴが人間外の存在という伏線かもしれない。

 

ケンゴと会話するシズマ会長だが、途中でハッキリとティガの姿が挿入されている。

この演出だと会長がティガのように見えるのだが、ティガは複数の変身者がいるのでこの世界ではそうだったのだろうか?

 

第1話の怪獣はゴルバーだが、実質的にメインの敵はカルミラである。

いうまでもなくティガの劇場版に登場した『カミーラ』を彷彿とさせるキャラだが、終始ダメージを受けることがなく妖艶な印象だったカミーラに対して、泥だらけでトリガーを痛めつけるカルミラはワイルドだ。

 

まさか1話からウルトラマンが泥だらけになるバトルが見られるとは思わなかった。

個人的には、今までの1話と違うものを作ろうとするスタッフの意気込みを感じられ印象深かった。

恐らく何かしらの愛憎関係にあると思われるトリガーとカルミラ。

この場面は映画『ミザリー』で主人公の小説家と、彼を監禁するアニーが取っ組み合いになる場面を彷彿とさせる。

ミザリーのこの場面は一種のラブシーンと見る意見もあるが、カルミラの姿からもねじ曲がった愛情を感じずにはいられなかった。

ただし、まだ2人の関係が何なのか明確に語られていないのだが。

ゴルバーとのバトルはさすが坂本浩一監督だけあって見どころ満載。

上へ下へと自在に移動するカメラアングルでトリガーとゴルバーを立体的に捉え、まるでジェットコースターに乗っているような大迫力のバトルを見せていた。

色々な意見もあると思われるサークルアームズも、最後はゼペリオン光線で戦いが締められたことでウルトラマンらしさが保たれていたと思う。

 

一方で割りを食ってしまったのがゴルバーだ。

いうまでもなく、新しいウルトラマンの第一印象を左右するのは最初の敵である。

ゴルバーの元となった怪獣『ゴルザ』と『メルバ』はウルトラマンティガの第1話に登場した怪獣だが、この2体はリアルタイムで見た時強い個性を持っていた。

 

すなわちオーソドックスな怪獣タイプで、怪力が自慢のゴルザ。

大きな羽を持ち、猛スピードで空を飛ぶメルバ。

それぞれ特性を持った2体にタイプチェンジして立ち向かうことで、ティガは色と能力を変えて戦うウルトラマンだと幼い私にもはっきりと理解できた。

 

対してゴルバーはカルミラとサークルアームズの前座的な意味合いが強く、何か優れた能力が描写されたわけでもないため印象が薄くなってしまった。

この辺りはウルトラマンの魅力を怪獣に重点を置くか、他の部分に置くかで評価は人により変わってくるだろう。

だが私個人としては、この1話ではトリガーのキャラクターに引き込まれるパワーが不足していた。

 

1話では防衛チーム『GUTS-SELECT』の活躍はなし。

物語が本格化するのは防衛チームが動き出してからなので、今後のエピソードに期待したい。

『NEW GENERATION TIGA』に寄せて

ウルトラマンティガを楽しんで見た世代であるが、子どもだった私にティガが世間にどう受け止められていたか知る方法などなかった。

今の時代はまた違うのかも知れないが、当時の小学3年生といえば特撮ヒーローも卒業する年齢である。

思い返せば、クラスメイトとウルトラマンティガの話をした記憶は一度もない。

当時の特撮ヒーローといえばビーファイターカブトやカーレンジャーがあった。

かろうじてその2作は友達も時々見ていたようだが、ティガは誰も見ていなかったのだろうか?

このような状況だったので、後々書籍などで当時の反響などを読んでも正直私はピンとこない。

 

ただそんな私でも感じていたことがある。

それはティガがM78星雲出身でないということで何か・・・・・・ ウルトラマンの新しい『何か』が始まったという感覚だ。

周知の事実だが、ティガでテレビに復活したウルトラシリーズはその後何度かの休止を挟みながら現在まで継続している。

今日のこの状況はティガのお陰であるという意見にまず異論はないと思っている。

 

私にとってティガが与えてくれた衝撃とは、そういう新しい時代へのワクワクとした気持ちであった。

 

ウルトラマントリガーがティガに関連する作品として企画された以上、トリガーの内容一つ一つにティガを重ねてしまうのは仕方ないことである。

しかし坂本浩一監督が各インタビューで語っているように、本作はティガの続編でもリブートでもない。

ウルトラマントリガーはティガの志を受け継いだ『新作』だ。

だから本作を視聴する時は、あまりティガを意識しないことが正しい見方なのかもしれない。

 

ウルトラマンティガがスタートした1996年。

前年に地下鉄サリン事件、阪神淡路大震災と暗い出来事が続いた時代がティガが生まれた時代だった。

そんな暗い現実と相反するように、ティガの世界は人類同士の争いが解決された時代だという。

しかし争いが解決しても、人類が抱える問題が消えることはない。

エボリュウ細胞、イーヴィルティガ・・・・・・ ティガの戦いは怪獣や侵略者との戦いであると同時に人間の悪しき『心』との戦いでもあった。

そこには暗い現実に負けてほしくないという視聴者へのメッセージが込められていたように思う。

 

奇しくもウルトラマントリガーが生まれた2021年も世界的な災いの渦中にある。

歴史は繰り返すというが、だからこそトリガーが未来へと繋がるワクワク感と明るい希望を与えてくれる作品になることを期待している。