メイドカフェに通っていると、昔は考えられなかったことに嬉しさを感じるようになります。
「働いているメイドさんがそのお店を好きだと思ってくれること」
福岡市天神のメイドカフェ・めるドナ。
今回このお店を卒業される方とお話する中で、そのことをより強く実感しました。
彼女と出会えた回数はそれほど多くはありません。
卒業を間近に控えた時期になってやっと、色々とお話ができました。
「メイドに憧れていました。でも人前に出たり、話したりするのが苦手だったから他の接客業を経験して勉強しました」
そう語ってくれた彼女。
マスクで表情は見えなくても、その瞳にはこの数カ月で成長した自信が満ちていました。
最初の日は緊張して、先輩の後ろにずっとくっついていたとのこと。
それでも三日目くらいで徐々に慣れたそう。
その適応力の高さに、彼女の秘めたポテンシャルの高さを感じました。
「お客さんが優しかったから良かった」
彼女の口から語られる言葉。
この言葉は、私以外の多くのお客さんにも聞いていただきたい言葉です。
なかなかお店で会えない分、彼女のSNSを拝見していました。
同僚のメイドさん達のことを大切にしていて、その様子がとても微笑ましかった。
一方で、それと同じくらい彼女はお客さんのことを大切に思ってくれていました。
それでも、まだどこか緊張があった彼女の転機はめるドナのアイドルユニット・MERUPURO(メルプロ)のライブ。
「それまでは緊張で空回りすることもありました。でも、ステージに立つことでお店でも素でいられるようになったんです」
ライブに出演した彼女。
私が彼女の立場でステージに立てと言われたら、色々な言い訳を探してきっと逃げたと思います。
私もライブを見させていただきましたが、とにかく熱狂が凄くてステージに立つなど想像もできませんでした。
しかし人前に出るのが苦手だと語っていた彼女は、それを見事にやり遂げたのです。
その勇気が、とても素敵だと思いました。
華やかそうに見える場所でも、そこは失敗も人目にさらされる場所。
きっとお店以上の緊張だったでしょう。
ですが、あの日の彼女はとても輝いていました。
一瞬一瞬を大切に、一生懸命に。
それはメイドの衣装をまとっている時と同じか、それ以上に彼女の内に秘めた魅力が発揮された時間。
そこに立ち会えたのは光栄でした。
他のどの時でもなく「あの年のあの時期」に、彼女がお店に来てくれてよかったと思えたのです。
「お久しぶりですね、お元気でしたか?」
周りの状況に気配りし、お客さんに話しかける彼女。
気遣いの言葉に彼女の成長を感じました。
彼女のエプロンには蛍光ペンの跡があります。
彼女がいうには、これを見ると「私は頑張ったんだな」と思うそう。
そのようなことを考えたことのなかった私はハッとしました。
これは彼女にとっての勲章。
私たちお客さんのために頑張ってくれた証。
するとその跡が、とてもチャーミングに見えてくるから不思議なものです。
「この場所が好きです」
話を聞く中で感動した言葉。
彼女が語ってくれた言葉です。
この店に通い、二年以上の月日が流れました。
やはり愛着があります。
だからこそ、働いてる彼女がそう思ってくれたことが本当に嬉しかったです。
彼女との出会いが私に教えてくれたこと。
それはこの場所が素敵な場所であるという確信。
彼女の前にも多くの先輩たちがいました。
私がここを知る前にも、たくさんのメイドさんがいたのでしょう。
ここが好きと言ってくれる後輩がいる。
それは先輩たちがここで過ごし、努力して繋いできた日々は間違っていなかったという証。
私の脳裏に、この場所で出会い別れたメイドさんたちの姿が甦りました。
「あなた達がここにいてくれたことは、本当に素晴らしいことだったんだよ」
その人たちに向けて、私は心の中でそう語りかけました。
この世界に縁というものがあるのだとすれば、彼女との出会いもまた縁だったのでしょう。
自分が好きになった場所は、やっぱり素敵な場所だった。
彼女はそのことを私に教えてくれました。
感謝しています。
一方で彼女がそう思えるようになるためには、やはり努力もあったはず。
満席に近い店内で、的確に仕事をこなす彼女の姿に「頑張ったんだな」と感じました。
神楽(かぐら)とは、神に奉納される歌を伴う舞。
彼女はお客さんが楽しく過ごせるように、たくさんの愛情と笑顔を捧げてくれました。
ライブでは、歌も舞も。
その名の通りめるドナでの日々を駆け抜けた彼女。
大切なことを感じさせてくれた彼女に、私は心より感謝します。
どうか笑顔を絶やさず新しいステージへ舞い踊って欲しい。
そして、いつの日かまた何処かで‥‥‥
本当にお疲れ様でした。ありがとう!
次の未来に向けて‥‥‥ 行ってらっしゃいませ!