童話の『シンデレラ』で疑問に思われたことはないでしょうか?
なぜ夜中の12時を過ぎて魔法が解けても、シンデレラのガラスの靴だけがそのままだったのか。
色々意見はあると思うんですが、個人的には「魔法が解けないでほしい」というシンデレラの強い願いが靴に宿ったのではないか・・・・・・ と考えています。
魔法は万能の力であると同時に、人に夢や希望を与えるもの。
福岡市天神にあるメイドカフェ『めるドナ』を今回旅立たれる方は、私の心に大切な魔法をかけてくれました。
週に一度だけ、それでもその日になればいつだってその方に会うことができました。
私が出会った時には既にメイドとしての経験を積まれていて、後輩のメイドさんたちにとってお姉さんのようだった彼女。
客である私にとっても、彼女はお店に居てくれると心から安心感を感じるメイドさんでした。
魔法少女物が好きで可愛い衣装への憧れもありメイドになったという彼女ですが、最初の頃はとても緊張していたそうです。
私がお店を知るずっと前のことですが、彼女もまたこの場所でたくさんの思い出を重ねてきたのだと思いました。
「ライブで歌うこともできました。この場所は夢が叶う場所なんです」
ある時彼女が語ってくれた言葉です。
いつの頃からか、私にとってもこのお店はとても大事なものになっていました。
最初はただ興味本位で訪れていたはずの場所。
だけどいつの間にか自分で思っているよりもずっと、私はこのお店が好きになっていたようです。
だから、ここで働いている彼女の言葉が本当に嬉しかったんですよ。
その頃は少しずつ見知ったメイドさんが卒業して新人の方が入られる時期でもありました。
馴染みのある人との別れは辛く、新しい人と果たして楽しく過ごせるのかという不安・・・
だけど彼女が大切にしているこのお店であればきっと大丈夫だと、そう私は信じました。
その気持ちは、まるで彼女が私にかけてくれた魔法のようでした。
思えば本当にいつも私は彼女の魔法に助けられています。
仕事帰りにお店に立ち寄り、話が必然的に仕事についてのことになった時です。
「心が壊れたら駄目ですよ」
彼女がそう言葉をかけてくれました。
精一杯働けとはよくいわれても、心のことを思って語ってくれた言葉を聞くなどいつぶりだったでしょうか。
彼女の優しい気持ちに感動しました。心から嬉しかったです。
あれは彼女の生誕を祝うイベントの日でした。
私は店が閉まる時間までいて、最後の方に店を出たんですがドアが閉まった後に「ありがとうございました」という彼女の声が聞こえたんです。
それはこの日一緒に働いていたメイドさんたちへのお礼の言葉だったんですが、それを聞いた時に何だか凄く感動したんですよね。
生誕って自分が主役じゃないですか。
いくら仕事の場とはいえ、自分がもしその立場になればやっぱりどこか浮ついた気持ちが出ちゃうと思うんです。
だけど彼女はそうじゃなかった。
「終わった」でも「疲れた」でもなく、最初に出た言葉は周囲への感謝の言葉。
当然のことかもしれないけど、それができる人ばかりではありません。
本当に・・・・・・ 素敵な人だと思いました。
同時に彼女に出会えたことに感謝しましたよ。
社会情勢的なものもあり、人間の嫌な部分ばかりが目や耳に飛び込んできていました。
だけど人間にはそうじゃない美しい部分だってちゃんとある。
そのことを彼女の姿が教えてくれました。また一つ私は彼女から魔法をかけてもらいました。
悔いはありますよ。
もっと早くお店と出会っていたらとか、もっとたくさん会えばよかったとか。
だけど出会えたことそのものに意味があると、今はそう思っています。
彼女が店を離れることを知った後、一度だけ彼女と会える機会がありました。
寂しい気持ちがありましたが、彼女の前向きな新しい決意を感じることができて気持ちが変わりました。
たくさんのメイドさんとの別れがあり、その度に寂しくても別れを納得して消化してきました。
きっとこれからもそれは続いていくでしょう。
別れは辛く寂しいものです。
それでも私はここにいるメイドさんのことが好きだし、これから出会うメイドさんも好きなると思います。
好きな人たちが前向きに笑顔で進もうとする時に悲しむ理由など何もない。
別れは寂しくはあっても、悲しいものではないのです。
人を好きになるとはどういうことなのか。彼女は大切なことを教えてくれました。
これもまた魔法でした。
どんな魔法にもいつかはとける時がやってくる。だけど私はそうではないと思います。
彼女が教えてくれた大切なことや残してくれた楽しい思い出は、いつまでも私の中にあります。
いや・・・・・・ 私だけではないでしょう。
この場所で彼女と出会った全ての人の中でそれは生き続けています。
心の中にそれがある限り、彼女がかけてくれた魔法が終わることはけっしてありません。
古今東西様々な魔法使いがいますが、永遠にとけることのない魔法を使うことができた魔法使いがいたでしょうか。
どんな魔法使いができなかったこともやりとげた彼女。
彼女の言葉が、笑顔が、彼女の存在自体がかけがえのない魔法でした。
彼女の優しさは、人はこんなにも優しくなれるのだと私に教えてくれた希望です。
だからこれからは、その魔法を新しい場所で出会う人たちにかけてあげて欲しいと思います。
本当にお疲れさまでした。大切な魔法をありがとう。
この場所と、この場所にいる仲間たちを支えてくれてありがとう。
次の旅に向かって・・・・・・ いってらっしゃいませ。
めるドナ(公式) (@merudona) | Twitter