ネコはミカンを片手に夜明けを待つ

日々の中で出会った映画・本・お店、演劇や物などを総合的に紹介する雑記ブログです。

ありがとうかしいかえん

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はじめに

2022年になりました。

まだまだ世の中は先の見えない状況が続いておりますが、今年こそはどうにか色々なことが落ち着いた年になればいいなと思っています。

1月の世の中は大変なことになっていますが‥‥‥

 

さて、去る2021年12月30日に福岡市東区にある遊園地『かしいかえん』が閉園しました。福岡市唯一の遊園地でその歴史は65年という長いもの。

私の両親がほぼほぼ近い年齢なので、両親が生まれてから孫のいる今の年齢になるのと同じくらいの年月を刻んでいたことになります。

 

熱心に通ったのはこの2年ほどでしたが、本当にお世話になり楽しい想い出がたくさんできました。

最後の営業日に立ち会い、門が閉じられた時に感じた寂しさ。

園から出る時に見送ってくださった沢山のスタッフの姿を忘れられません。

この素晴らしい場所を忘れないために、この記事では私とかしいかえんとの関わりを記したい思います。

いつか誰かがこの記事を見た時に、かって福岡にあったある遊園地を思いだしてくれたら幸いです。

最初の関わり

かしいかえんに最初に訪れたのは2015年です。

当時放送していた特撮ヒーロードラマ『ウルトラマンX』のショーがここで開催され、主演の俳優・高橋健介さんも出演されました。

当時はSNSなどもやっておらず、情報に疎かったこともあり特撮のイベントに行くのも年に数えるほど。

遠方までイベントを観に行くこともほとんどなかったので、俳優が出演するイベントが身近な場所で開催されることに驚きを感じました。

反面、正直に告白すると家族連れで賑わう遊園地へ一人で行くことに抵抗がありました。

とはいえ貴重な機会を無駄にしては後悔すると思いかしいかえんを訪れた結果、高橋さんとハイタッチすることもでき楽しい時間を過ごすせました。

残念ながらそのショーの写真は残っていません。

ですが数年ぶりに観たヒーローショーだったこともあり、普段の色々な悩みや苦しみも忘れて楽しい時間に没頭できました。

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「花の綺麗な場所」というのがかしいかえんの最初の印象です。

入り口付近から丁寧に手入れしてある花壇が並び、青空がとても映えていました。

街中で時折見かける花にも気持ちが癒やされますが、香椎花園に植えられた美しい花には無条件に心をワクワクさせてくれる効果があります。

かしいかえんがある東区は福岡市内から市外へと景色が変わっていく境目にあたるのですが、遊園地の持つ非日常感はまるで奇跡のようにこの土地柄にマッチしていたように思います。

近くに海も山もある自然に囲まれたロケーション。

私は育った土地柄から街中よりも自然のある場所のほうが落ち着きますが、だからこそここに来ると安心感を感じていました。

2019年には『ウルトラマンR/B(ルーブ)』の湊イサミ・小池亮介さんが来られるということで観に行きこの時は写真を撮ることができました。

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私はこの頃まで写真を撮ることにほとんど関心がありませんでしたが、スマホカメラの性能を過信しせっかくのショーを上手く撮れなかった後悔が心に生まれました。

「綺麗に撮れるカメラを買おう」

このショーはそう考える転機となりました。

後々になってカメラは本当に重宝することになるのですが、かしいかえんがなければその転機もなかったかもしれません。

その意味でも私にとってこの場所との出会いは大きなターニングポイントとなりました。

ドゲンジャーズの時代

2020年4月から放送された特撮ヒーロードラマ『ドゲンジャーズ』は福岡が舞台です。

劇中でもかしいかえんがロケ地として使われていましたが、それ以前から作中に登場するヒーロー達はここでショーを行っていました。

放送当時は新型コロナウイルスの流行により多くの映像作品が制作中断を余儀なくされていた頃で、前代未聞の事態に誰もが先の見えない不安を抱えていました。

そんな中でドゲンジャーズは作品が完成した上で放送されたため、滞りなく放送が行われ爆発的な人気を獲得。

そして最終回の放送を一週間後に控えた2020年6月21日、かしいかえんでドゲンジャーズショーが開催されました。

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この時の会場の熱気を私は生涯忘れることはないでしょう。

先に会場に到着した友人から送られてきた『既に長い列ができている』というLINEのメッセージ。

入り口に並ぶ多くに人が口にする『ドゲンジャーズ』という言葉。ステージのある大テントに集まった数え切れないほどの人々。

会場を彩る食べ物や物販の出店。

まるで暗い世相を吹き飛ばす嵐が吹いているかのように、この日の会場は活気に満ち溢れていました。

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そしていよいよショーが開園。

テレビで観ているキャラクターたちがすぐ目の前にいる。しかも作中で彼らが訪れていたこの場所で。

ドゲンジャーズに登場するヒーロー達は実在しているのですが、この時はまるで現実と空想が一つになったような不思議な感覚がしました。

恐らくこの日会場に訪れた多くの人もそうした感覚を味わったのではないでしょうか。

一度目のショーが終わっても帰らず、二度目のショーまで残る観客もたくさんいました。

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私は東京でもヒーローショーを観たことがあります。

もちろん都内と地方とでは人の数が違いますが、この日のかしいかえんの熱気は東京の会場にも負けていませんでした。

それはこの福岡の地で起こった奇跡だったと思います。

それを起こしたのはドゲンジャーズに携わった方々、作品を愛したファン、そしてかしいかえんを運営するスタッフ・・・・・・

みんなで一体となって起こした奇跡でした。

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その後も何度もドゲンジャーズショーに足を運びました。

福岡を中心に活動するアイドルグループ『LinQ』とコラボしたステージもあり、歌と踊りに楽しい時間をもらったこともありました。

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他にも通っていると少しずつドゲンジャーズファンの方々との交流も広がり、会場でお会いすることが楽しみになっていました。

そうしたかけがえのない出会いに恵まれたこともあり、だからこそこの場所には感謝しています。

大事にしたいもの

かしいかえんの閉園のニュースを聞いた2021年は、個人的にも様々なことのあった一年でした。

きついことが多かったですが、時として人生には思いがけないことが起こるもの。

2021年10月に開催されたイベント『アイコスフォーエバー香椎花園』。

このイベントに出演される方の中で、どうしてもその姿を見たい出演者がいました。

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『桜雫(さくらだ)にゃも』さん。

私は彼女の姿にとても励まされました。自分のやってみたいことにどこまでも挑戦していく姿勢。

会いに来た人の一人一人へ見せる気遣い。

彼女と話す人はみんな笑顔になっていたのが印象的で、人を楽しい気持ちにさせてくれる素敵な方だと感じました。

もちろんステージ上でのパフォーマンスも最高の一言。

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可愛い衣装に身を包んだ彼女の歌声に心が癒やされたこの日。

残念なことに2021年は、多くの人にとって前年にも増して制限やストレスの多い一年となりました。

私自身もそうしたことに押しつぶされそうになりましたが、それを救ってくださったのがにゃもさんとの出会いでした。

不思議な力を持つ方で、彼女とお話していると澄んだ空気を吸っているように穏やかな気持ちになれるんです。

人間のことがとても好きで、だから頑張ることができる人。

私は同じにようにはなれないけど本当にこんな人になりたいと思いました。

ステージで彼女が伝えてくれた「一度きりの人生だから悔いなく」という言葉。

私は自分の決めたルールに縛られて自分で自分を締め付けることがよくあります。

本当はそんな拘りを捨ててしまえば自由になれるとわかっているのに、長く縛られ過ぎるとそれに慣れきって新しいことに進むのが恐くなる。

だけどにゃもさんの声を聞いていると、何だか「怖がらなくても大丈夫だよ」と背中を押してもらえているような気持ちになるんです。

まるで魔法にかけられたように。

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生きていると本当に色々なことがあります。恐らく楽しいことより苦しいことのほうが多い。

それでも願い続けていれば、いつかは自分の願いが叶うこともあるから生きるのはやめられないと。

このイベントを観るのはこれが初めてでしたが、よく知るかしいかえんだったからこそ来やすい雰囲気を感じた部分もありました。

ウルトラマンから始まったかしいかえんとの関わりが、ドゲンジャーズを経てコスプレイヤーのイベントへ。

振り返ってみると不思議でもあり、だけど一つ一つが繋がったものであったと思います。

にゃもさんと出会うことで「生きていることは楽しい」と私は改めて感じることができました。

いつまでも大事にしたい記憶です。

想い出のある場所

それからも何度か足を運びました。

最後のドゲンジャーズショー観戦となった2021年のハロウィン。

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ローカルヒーロー『ガンバ李α』が中心となり、他のヒーローも出演したショー。

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そして訪れた2021年12月30日。

その日は特にヒーローショーの予定などはありませんでしたが、どうしても最後の営業日に立ち会いたくなりました。

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園の場所を一つ一つ見て回りました。考えてみると、いつもここに来る一直線に大テントに向かってばかりだったため知らないエリアもたくさんありました。

「こんなに広かったのか」

最後の日になって改めて香椎花園には色々な遊具があり、自分が思っていたよりずっと広い場所だったことに気が付きました。

自分が見てきたのはこの遊園地のほんの一部の場所。だけど本当は広くて、そこでは数えきれないくらいの想い出が刻まれてきたのだと。

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一番お世話になった場所、大テントにも行きました。

物販の店が並びドゲンジャーズ関連の車両が並んでいた広場も、もう何もありませんでした。

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午前と午後の二度あるショーの合間に、ふらりとヒーローたちがやってきてお客さん達を盛り上げてくれた場所。

明るい日差しとファンの熱意、ヒーローたちの軽快なトーク。

それを見ていた日々が昨日のことのようです。

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そのまま大テントに入り、ぼおっとステージを眺めていました。

「いい場所だ」

これまで何度も目にしているはずなのに改めてそう感じました。

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けっして設備が充実しているわけじゃないけれど、何より屋外という開放感がある。

自然の光がある。

暑さも寒さも、季節の移り変わりを感じながら楽しんだ想い出の場所。

もう二度と来ることができない場所。

自分なりに別れを告げてテントを出ました。間もなく閉園の時間です。

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その時夕日がかしいかえんを照らしました。

 

この日の天気は曇り。あまり陽が差す時間はなかったにも関わらず、不思議なことに閉園間近のこの時間だけは美しい夕日が顔を出したのです。

まるでかしいかえんに「お疲れ様」といっているように。

 

特別なことではなく、この夕日は今まで何度もこの場所を照らしてきたのでしょう。

それでもこの夕日が沈むと共に一つの歴史が終わる。多くの人が寂しさに包まれている。

だけど明日になれば、また太陽が昇って新しい一日が始まる。

そうして世界は進んでいく。だから新しい未来へ進んで行けと、いささか感情が入りすぎかもしれませんが夕日が語り掛けているようでした。

 

そしてその時がやって来ました。

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フードコートから人が去り、観覧車が最後の役目を終え止まった時全てが終わりました。

名残惜しそうに残っていた人達も、少しずつ出口へ向かっていきます。

テレビ番組の収録でもしていたのか、タレントらしき男性が何やら話ながら歩いていきました。空にはヘリコプターも飛んでいます。

出口にいたのは今日までこの場所を支えてきたスタッフの皆さん。

「ありがとうございました」

最後まで丁寧にお客さんを送り出しています。

「ヒーローショーを観に来るのが楽しみで、そこで知り合えた人達もいました。楽しい想い出をありがとうございました」

心からの感謝をスタッフの方に伝え、私は園から出ました。

何度も通った道なのに、この時は妙にその道が長く感じたことを覚えています。

太陽はすっかり沈み、暗闇と寒さが周囲を支配していました。

ですが門の前にはたくさんの人だかりがあり、熱気に包まれています。

たくさんの報道陣が詰めかけていました。

何があるのかわかりませんでしたが、ここまできたならとことん最後まで見届けたいと思った私もその場で待ちました。

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この日のラストを飾ったのは、地元の劇団の方々が扮するお芝居。

かしいかえんからマリンワールドへの人を楽しませるという思いの継承でした。

それも無事に終わった時、遂に門が完全に閉められました。

この時の何ともいえない寂しさ、止まることのないシャッターの音。

ずっとその門を見続ける人たちの姿‥‥‥ 今でも覚えています。

明日で2021年も終わり、すぐに新しい年がやってきます。

だけどこの門が開くことはもうありません。

本当に本当にかしいかえんの歴史は終わったのです。

 

だけど想い出はいつまでもこの門の中と、ここに訪れた人達の心の中にあります。私の想い出も、他のたくさんの人の想い出も。

だからそれを大切にしてまた日々を大切に過ごしていきたいです。

さようならかしいかえん。そしてありがとう。

改めて長い歴史を支えてきたスタッフの皆さんお疲れ様でした。

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