はじめに
『地球戦隊ファイブマン』に関しては、2021年に放送された某バラエティー番組でいささか未見の人には誤解を招きかねない取り上げられ方がされていた。
私自身はこれに関して憤慨した部分もあった反面、バラエティーとして割り切っていたが番組内で発言された意見も確かに一理あるものと感じた。
当ブログでは過去に『超獣戦隊ライブマン』の感想を全話綴ったが、続く『高速戦隊ターボレンジャー』に関しては私の時間的な制約もあり全話の感想を書くことはできなかった。
しかしファイブマンについては、例えどんなに下手な文章であっても感想を書かなければと思っている。
何故なら私が初めてテレビで見たスーパー戦隊こそファイブマンだからだ。
放送当時の記憶はほとんどないが、間違いなく本作こそ自分とスーパー戦隊シリーズとの出会となった作品である。
そして‥‥‥ だからこそというべきか、シリーズの中で個人的に一番好きな作品だ。
一時は幻の作品となっていた本作の魅力を、放送開始から30年の時間を越えて振り返っていければ幸いだ。
第1話『五兄弟戦士』
脚本:曽田博久 監督:長石多可男
本作の始まりは前作のターボレンジャーと対になる形で始まる。
ターボレンジャーが生徒ならファイブマンは教師だ。
そして物語も学校という極めて日常的な場所から始まるターボレンジャーに対し、地球から遠く離れた惑星シドンからファイブマンの物語が始まる。
何といってもこの1話では敵である『銀帝軍ゾーン』の非道さが際立っていた。
活躍の具合では明らかにファイブマン側よりもゾーン側の方に重点が置かれている。
こうした構成は、視聴者がストレートにファイブマンに感情移入できるよう配慮されたものだ。
そしてゾーンの非道さは、ファイブマンが戦う理由を明確に描き出す効果も上げていたと思う。
この辺りはハードなライブマンからライトなターボレンジャー、転じて再びハードなファイブマンへ的確に切り替えができる曽田博久氏の力量を感じることができる。
肝心のファイブマン達については兄弟ということで明確な序列があり、比較的それぞれの個性が上手く描かれていたと感じる。
近年の作品を見慣れるとレッドが年長者、長男というのを意外に感じる人もいるかもしれない。
時代時代によって描かれる兄弟戦隊のレッドの役割を意識して見るのも面白いだろう。
ガロア艦長に敢えて紳士的な言葉を使うファイブレッドだが、例え憎き敵であっても怒り任せにならない星川学の頼もしさを表現するのに良い演出だと思う。
新しい物語の始まりとして相応しいボリュームのある1話だった。
第2話『父の仇!母の仇』
脚本:曽田博久 監督:長石多可男
本格的に物語が動き出す2話。この回でファイブロボが初登場する。
敵の基地を発見して復讐心を抑えられない学以外の兄弟達。
物語の初期でメンバーが対立する展開はよくあることだが、個人的な事情でなく兄弟共通の思いから対立が生まれるというのが物語に厚みを与えていた。
不覚にも敵に捕らえられてしまう4人だが、彼らを救出するのはやはり学。
ターボレンジャーもそうだが、この時期は特にレッドの強さに重点が置かれているように思う。
頭一つ抜けているというか、存在感が明らかに他のメンバーと違うのだ。
ファイブマンの場合は、教師という子どもを教える存在である以上学の頼もしさは作品の中でプラスに働いている。
兄弟の中で際立って強いのも長男であればこそ。それだけで他の理由はいらない。
この辺りは全員が同級生でありながら、その強さが他のメンバーを追い抜いていたレッドターボと良い意味で差別化できていると思う。
今回が初登場となるファイブロボ。
もちろん好きではあるのだが、やはりライブロボやターボロボを連続して見た後だとやや地味な印象に感じてしまった。
合体前のメカは一台一台とてもカッコいいのだが、車というわかりやすい身近な存在で統一されていたターボロボの後だと子ども達も物足りなく感じてしまったかもしれない。
最も今作が戦隊との出会いとなった私のような子どもであれば、それは全く問題ないことなのだが。
第3話『挑戦!銀河の虎』
脚本:曽田博久 監督:蓑輪雅夫
敵幹部の中でビリオンの活躍が本格的に描かれる回。
一見剣を使う正統派なライバルキャラかと思いきや、実態は卑怯な手段を好んで使う悪党であることが描かれる。
最もビリオンを正々堂々としたキャラにしてしまうと、視聴者はファイブマンよりビリオンに感情移入してしまうかもしれないが‥‥‥
ファイブマンの凄い所は1話でニュータウン小学校を破壊されているにも関わらず、子ども達との交流を通して『教師』の設定を活かしていることだろう。
かっての『ウルトラマン80』のように、特撮ヒーロー物で学校を舞台にするのはかなり難しい。
ターボレンジャーで主人公達の学生生活がそこまで大きな比重で描かれなかったのも、そのことを意味していると思う。
そのでファイブマンは学校が登場しないことに明確な理由が与えられていて、子どもが対象でありながら説得力ある世界観が構築できていたと感じる。
早くもこの回でビリオンとトラルギンで内紛的なものが描かれていた。
終盤で描かれるゾーンの崩壊への伏線はこの時点であったのだと見直して思った。
第4話『地球を酔わせろ』
脚本:曽田博久 監督:蓑輪雅夫
ファイブイエロー・レミの初のメイン回。
アクション女優であるレミ約の早瀬恵子氏のアクションが堪能できると同時に、レミがどういうキャラなのか把握できる回だ。
子どもが酔っぱらうという展開も今の時代なら恐らくできないことだろう。
この辺りは時代を感じさせられる。
レミの特訓に付き合うアーサー。ファイブマンの生活に密着していることから、アーサーも家族の一員だということが伝わってくる。
またレミのライバルとして活躍するドルドラやザザの活躍も印象深い。
今回ファイブロボの二刀流が初めて披露される。
これは初見だとかなり意外性を感じさせる面白い試みだと思う。
ロボの個性においても、新しい挑戦をしようとする製作者の想いが伝わってきた。