仮面ライダー龍騎に登場した仮面ライダーシザースをご存知だろうか?
13人の仮面ライダーがそれぞれの願いをかけて最後の一人になるまで戦うという本作において、最初にライダーバトルに敗れ物語から退場した仮面ライダーである(といっても登場エピソードは2回のみだが)。
魂ウェブ商店限定 SHFiguarts 仮面ライダーシザース
この仮面ライダーシザースは弱いというイメージを持たれやすい。
それは主に2つの理由がある。
本作のライダーたちは、ベルトに装着されているカードデッキのカードの能力で戦う。
当然カードの枚数が多かったり、特殊な能力を発揮するカードを持つライダーは戦いに有利だ。
その点でいうとシザースのデッキはハズレと見られやすい。
特殊なカードは一枚もなく、カードで召喚する武装も巨大なハサミと盾しかない。
カードの種類の少ないライダーは他にもいるのだが、そうしたライダーもデメリットを補う何らかのカードを持つ者が多い。
その点でシザースのデッキは見劣りするといわざるをえない。
もう一つのは契約モンスターの強さである。
龍騎に登場するライダーはミラーワールドと呼ばれる鏡の中に住むモンスターと契約し力を得る。
モンスターの持つ強さはそのままライダーの強さにつながっている。
各契約モンスターにはその強さを表す数値があるのだが、シザースの契約モンスター「ボルキャンサー」の数値はモンスターの中で一番低い。
カードの種類の少なさと契約モンスターの弱さ。
主人公である仮面ライダー龍騎やその仲間である仮面ライダーナイトはカードの種類も多く、モンスターの数値もシザースより高い。
これらの情報だけを見れば、シザースは弱いというイメージを持たれるのも無理のないことだ。
しかしである。
実際の作中でシザースは仮面ライダーナイトと戦い、破れはしたものの互角以上に渡り合い必殺技の撃ち合いにも勝利している。
敗れた理由はナイトがとっさに放った一撃が偶然シザースのデッキを破壊していたためだ。
つまりそれさえなければ勝敗は逆になっていた可能性は非常に高い。
ここで改めて疑問に思う。シザースは本当に弱いのだろうか?
答えは否だ。シザースは強い。
シザースに変身するのは悪徳警官の須藤雅史だ。
この警官という職業が肝である。ご存知の方も多いと思うが、警察官は職務のために格闘技や逮捕術に精通している。
本作でライダーに変身する人間の中には凶悪な犯罪者もいるが、基本的には全員戦いには縁のなかった一般人である。
いくら変身して身体能力が上がったとしても、戦いにおいては須藤が一歩抜きん出ているのは明らかだ。
その上でシザースというライダーの特徴を分析すると、須藤の能力に絶妙にマッチしていることに気づく。
先に特殊なカードを持つことは戦いに有利と書いたが、実はここに一つ落とし穴がある。
どんなに特殊なカードを持っていようと、肉弾戦で相手の方が強ければ押し負ける可能性が高いのだ。
実際ナイトとシザースの戦いでは、小技を使うナイトに対しシザースは正面から応戦し追い詰めている。
ボルキャンサーという蟹のモンスターと契約しているだけあり、シザースの防御力は召喚する盾も含めて登場するライダーの中でも高い水準にある。
その防御力を活かし相手に接近し、格闘能力で正面から相手を追い込んでいく。
つまりシザースとは肉弾戦で最も力を発揮するライダーとして、その戦い方を想定されていたライダーではなかったのか。
そして警察官という職業の須藤は、そんなシザースにうってつけの人材だったのである。
シザースの最期はデッキが破壊されたことにより、契約が無効となったボルキャンサーに捕食するという壮絶なものであった。
ライダーバトルに負けたライダーがどうなるかを伝える重要な場面でもあり、同時にあまりに衝撃的な須藤の最期は視聴者に強い衝撃を残した。
一方でこのような死に方が描かれたのは須藤だけであり、自業自得とはいえある意味情けない退場の仕方もシザースが弱いという印象を持たれる理由の一つだろう。
しかし自身が変身するライダーの特性を使いこなし、デッキ内容では自身を上回る相手に競り勝つ姿を見せたシザースが弱いとはどうしても思えない。
何より変身者の須藤には、相手の命を奪うことへのためらいが一切ない。
戦いに参加しながらも相手を倒すことに迷いを見せるライダーも少なくない中、須藤のためらいのなさは際立っている。
シザースのデッキが他のライダーより見劣りするのは事実だがそれを使いこなし、格闘技に精通し、相手を倒すことに迷いがない。
序盤で登場しすぐに退場したため誤解されがちだが、仮面ライダーシザースは十分に強い難敵であった。