第17話作品情報
超獣戦隊ライブマン
第17話『泣く人形! 襲う人形!』
放送日:1988年6月18日
監督:東條昭平
脚本:藤井邦夫
登場怪人:ピエロヅノー
あらすじ
陸上少女の持つピエロの人形。心が宿るその人形を使ってケンプはピエロヅノーを作り出す。
感想
8話以来の藤井邦夫作品。非常にファンタックな作品で、これまでの話とも血色が違っていた。
陸上少女・レイコを見守るめぐみ。二人の関係性はよくわからないが、めぐみは女子アスリートのファンなのだろうか?
そのレイコが病気の妹からもらった大切なピエロ人形のトト。それは何と涙を流す心を持った人形であった。
あまりにも突拍子もない設定に面食らってしまった。しかもケンプはガッシュと共にその人形を探し求めていたという。
心を持った人形など科学と真逆の存在だと思うのだが……
しかし、前回ボルトは人間の魂を利用していた。彼らのいうところの科学とは、心とか魂とかそういうものまで解析して利用できる技術のことなのかもしれない。
しかしガッシュよ。人形というか、君にも心がある風にしか見えないのだが……
レイコの弱みに付け込んでトトを手に入れたケンプ。
早速ピエロヅノーを使って街中の人形を暴れさせるという作戦を展開する。
この人形が暴れる場面はなかなか恐い。
可愛いと思って近づくと人形が襲い掛かって来る不気味さは「チャイルド・プレイ」を彷彿とさせる。
ピエロヅノーと対峙するライブマンだが、正体がトトとわかると戦えないブルードルフィン。
この辺りは、人形という題材と女性キャラであるめぐみの相性がうまくハマっている。
トトと引き換えにケンプは速く走れるようになる靴をレイコに与えていた。
しかしこの靴、使い続けるとオーバーヒートで爆発するというとんでもない代物。
人形が手に入ればそれでいいだろうにここまでやるケンプの非道さ。
この嫌がらせとしか思えない靴もケンプがニヤニヤしながら作ったんだろうなあ……
その事実を必死にピエロヅノーに伝えるめぐみ。この一連の場面は演じる森恵さんの熱演が光っていた。
その後レイコを必死に追いかけるピエロヅノー。姿が変わっても持ち主を思う心が切ない。
結局ピエロヅノー撃破後、トトは多少燃えはしたもののレイコの元に帰ってきた。
そのことで最終的に救いのある話になっていて、後味の悪さは感じられなかった。
心のある人形という設定に驚いた今回。
だが、前回と合わせてライブマンに自由な作風を設けることに貢献していたと思う。
第18話作品情報
超獣戦隊ライブマン
第18話『罠! 丈の愛した頭脳獣』
放送日:1988年6月25日
監督:長石多可男
脚本:藤井邦夫
登場怪人:ツインヅノー
あらすじ
マゼンダそっくりのレイという女性と出会った丈。彼女の正体はマゼンダの「優しさと愛する心の遺伝子」から作られたツインヅノーだった。
感想
17話に引き続き藤井邦夫氏が脚本を担当したエピソード。
今まで語られていなかったマゼンダ・仙田ルイの心に焦点が当てられた話になる。
強化改造にあたりマゼンダの「優しさと愛する心の遺伝子」を抜き取っていたと語るビアス。
そうした感情は遺伝子で説明できるのかと疑問に思うが、この作品の世界ではそうだと思うしかない。
頭脳獣を作るためにこの遺伝子を保管していたと説明するマゼンダだが、どう見てもいつもの冷静さを欠いている。
というかビアス、どうやってこの遺伝子を見つけた? まさか乙女の部屋に不法侵入……
ともかく、マゼンダが作ったツインヅノーはレイというマゼンダそっくりの女性に姿を変え丈に接近する。
険しい表情と濃いメイクのマゼンダの時と、心優しいレイの時で来栖明子さんの演じ分けが凄い。
レイの声は来栖さんとは別人が担当しているが、それでも丈でなくても恋してしまいそうな可憐さだ。
この数年後に「五星戦隊ダイレンジャー」で来栖さんは、同じく善と悪のガラ中佐を演じるが改めて実力のある女優さんだったのだと実感した。
マゼンダの目的は丈を誘いだし、人間爆弾にしてライブマン基地に送り込むこと。
しかし何故選んだのが丈だったのだろうか? マゼンダ絡みならむしろ勇介の方が狙われる可能性が高いと思うのだが。
この辺りは丈とルイのエピソードが今まで描かれなかったので、やや話として弱い印象がある。
丈と過ごす中で本当の優しさに目覚めていたレイ。だが、最後には心まで完全な頭脳獣に変えられてしまう。
この時の、笑いながらもどこか泣いているようなマゼンダの表情とそれを見ていたアシュラが印象的。
ツインヅノーを倒したものの、ライブマンにとっては苦い勝利となった。
一方、ヅノーベースでは丈がレイに買ってあげたネックレスをアシュラがマゼンダに手渡していた。
アシュラの胸に去来していたものは何だったのだろう?
アシュラは人間だった毒島嵐の向上心と交戦的な面を残したまま強化された。
見方を変えれば、アシュラの心は嵐だった頃とそこまで極端には変わっていない。
一方、マゼンダは心を抜き取られて強化された。
そうでもしなければボルトになれなかったマゼンダに、アシュラは憐れみを感じたのだろうか……
俳優陣の熱演が光る今回の話。しかし、どうにも釈然としない思いがあったことも確か。
その理由はこれまでのマゼンダ・仙田ルイの描かれ方だ。
確かにマゼンダに優しい心があったことは意外だったが、これまでのエピソードではルイの頃にそうした優しさが描かれた話が一つもなかった。
彼女は常に傲慢で人を見下す人物として描かれていた。
多少なりとも彼女が他人に思いやりを見せる場面が過去にあれば今回の話にも納得できたかもしれない。
だが、どうしても過去の優しさにまつわる話がないせいで「優しさを消された悲劇の存在」というマゼンダのキャラに唐突さが否めなかったのだ。
マゼンダに優しい心があったことは確かに印象強かったが、それがレイという別人でなくルイ自身の時に描かれないとどうにも話に説得力が欠けてしまうように思えた。