ネコはミカンを片手に夜明けを待つ

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ドラマ『ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜』はなぜ成功したのか

2021年の夏は『ハコヅメ』の夏であったといっても過言ではない。

ハマった。久しぶりにこんなにもドラマにハマった。

特に事前情報も知らず見始めた本作に、まさかこんなにも楽しませてもらうとは!

気がつけば原作も読んで爆笑し、今では町山市に住む人々がたまらなく愛しくなっている。

放送中に本作が度々ヤフーニュースに取り上げられたり、ツイッターのトレンドに本作関連のワードが挙がったことなどから本作は一定の支持を得られたといえるだろう。

ドラマ『ハコヅメ』はなぜ成功することができたのだろうか?

漫画実写化の成功のとは

ドラマ『ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜』は泰三子が『モーニング』で連載している『ハコヅメ〜交番女子の逆襲』が原作となっている。

いわゆる漫画実写化作品であるが、私は過去に映画『るろうに剣心』を例にして漫画を実写化した際の『成功』とは何かを考察した。

 

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『るろうに剣心』と異なり、『ハコヅメ』はドラマで原作の存在を知った方も多いだろう。私もその一人だ。

当たり前の話になるが、テレビドラマという媒体で展開される以上はドラマ『ハコヅメ』のメインターゲットは原作を知らない層であると考えて間違いない。

『ハコヅメ』は映画ではなくドラマであるが、原作のファンでない人間が楽しめ視聴率も11%前後で推移するなど現代のドラマとしては十分成功したといえるだろう。

ドラマの面白さに惹かれ原作も読んだが、こちらもお世辞抜きに面白かった。

ドラマ版が面白かったのは、原作が魅力溢れた作品だったことが大きい。

もちろん他にも理由は様々だ。

原作キャラに見事にハマった俳優陣、制約の中で出来る限り原作を再現した作風、警察物であまり取り上げられてこなかった交番という題材の目新しさ・・・

 

だがドラマ版『ハコヅメ』を振り返る時、最大の魅力はドラマという媒体を活かした『縦の構造の巧みさ』だと私は感じた。

それはすなわち脚本の魅力に他ならない。

ドラマ『ハコヅメ』の巧みな脚本

ドラマ『ハコヅメ』の脚本の巧みさを痛感したのが第8話だった。

このエピソードは原作106話、71話、42話などを元に構成されているが、これらに原作同様ドラマ版の軸になる桜しおりの事故のエピソードも交えて展開されている。

 

ドラマしか見たことのない方は意外に感じるかもしれないが、原作は基本的に一話完結であるため元になったエピソードに関連性はない。

こうした本来は関連のない話をドラマ版では主人公・河合麻衣とその先輩・藤聖子が事件を通して信頼を深めていく展開へ再構成していた。

それにより原作を再現しながらも、1時間のドラマとして芯のある作品ができあがり視聴者は『一本のドラマ』を観た満足感に浸れるのだ。

 

ドラマ版は前半はコメディ調で話が進みながら、後半にシリアスな展開を持ってくるという特徴がある。

起承転結の基本に沿った展開だが、既に膨大な話数になる原作の中から最善のエピソードをチョイスし構成するためには制作者が原作を深く理解していなければならない。

その点について『ハコヅメ』は非常に恵まれた作品であったといえるだろう。

それを最も象徴するのがハコ長こと伊賀崎秀一である。

ドラマを貫いた伊賀崎の存在

ドラマ化にあたり、伊賀崎には原作に登場する複数のキャラクターの役割が与えられている。

こうした改変には賛否もあるだろうが、それによりドラマ版はある意味『伊賀崎の物語』というべき側面を持つに至った。

それが最も発揮されたのが最終回となる9話だ。

桜ひき逃げ事件の犯人だった木村を発見したのは原作では交通課の宮原だが、ドラマ版では河合が発見し伊賀崎が強い言葉をかけることで木村を思いとどまらせ、藤に手錠をかけさせた。

それによりドラマ版は原作とは別のベクトルで『決着感』を出すことに成功していた。

 

原作の伊賀崎はドラマ版と比較すると得体の知れなさが感じられるが、ドラマ版は原作の持ち味を残しながらもより人間味を感じさせる人物として描かれている。

そこにムロツヨシという役者が加わることで、脇にも中心にもなれるキャラクター性を持つことができた。

物語を貫く桜の事件。それに因縁を持つのは藤と伊賀崎。

しかし藤には新ペアである河合と絆を深めるという役割が与えられている。

だからこそ、ひき逃げ事件の決着は伊賀崎がつけなければならなかった。もう一つの桜のドラマは藤と河合にまかせるために。

 

 

ドラマとしてのクオリティの高さ

こうして原作から改変した部分がある一方で、その部分を上手く桜のひき逃げ事件に繋げることでドラマ『ハコヅメ』は9話を貫く芯を得ることができた。

それがドラマとして中だるみしない展開を作り、最終回の盛り上がりに至ったのだ。

 

第1話を始めて観た時に、このドラマにサスペンスの要素があるとは考えもしなかった。

恐らく1話完結で話が進み、最終回は前後編で完結するんだろうぐらいしか思っていなかった。

しかし徐々にひき逃げ事件が提示され、守護天使というミステリーワードが登場したことでコメディ以外の部分でも物語に惹かれていった。

 

芸達者な俳優陣、原作をリスペクトした制作陣が原作を活かしながらクオリティの高いドラマを目指したからこそ『ハコヅメ』は成功した。

もし次があるならば、さらに広がるキャラクター達のドラマが見たい。

そして何より、今も頑張っている全国の警察官の方々に心からエールを贈りたい。

そう感じる、本当に素敵な作品であった。ありがとう『ハコヅメ』。

 

※『ハコヅメ〜戦う!交番女子〜』はHuluで配信中。