ネコはミカンを片手に夜明けを待つ

日々の中で出会った映画・本・お店などのエンタメを紹介する雑記ブログです。小説やウルトラマンをはじめとした特撮を中心に運営中。

「映画クレヨンしんちゃん 暗黒タマタマ大追跡」追悼・藤原啓治さん ありがとう父ちゃん

しんのすけだって色んな人に守られて大きくなったんだぞ、父ちゃんもな

ま、父ちゃんにいわせりゃ自分一人ででかくなった気でいる奴は、でかくなる資格は無い

しんのすけ、父ちゃんに何かあったらひまわりのことを守ってやってくれよ

頼んだぜ、お兄ちゃん

映画の一場面。

ひまわりを狙う敵の追跡を逃れてようやく家族と再会。

しんのすけと一時の語らいをするひろしがしんのすけに言った言葉です。

野原ひろしを思い出すとき、私はいつもこの場面と台詞が思い浮かびます。

映画クレヨンしんちゃん 暗黒タマタマ大追跡」はクレヨンしんちゃんの劇場版第5作として1997年に公開されました。

私は当時小学4年生。

この頃にはクレヨンしんちゃんのテレビ放映を見たり見なかったりだったのですが、年に一度放送される劇場版は欠かさず見ていました。

クレヨンしんちゃんはちょうど私が保育園の時にテレビ放映が始まったので、私は最も初期のしんちゃんを見ていた世代です。

当時かなり大好きになって、保育園最後の年のクリスマスプレゼントにはクレヨンしんちゃんの平仮名や算数を勉強するワープロのような玩具を親にねだるほどでした。

お気に入りのキャラクターはもちろんしんのすけ。

父ちゃんこと野原ひろしは、幼い私にとってしんのすけに振り回される「面白い人」のような認識でした。

あれから長い年月が経ちました。

子どもだった私もひろしの年齢にもう間もなくなろうとしています。

年齢を重ねるにつれて、ひろしという人は男としても人間としても尊敬できる人だと強く思うようになりました。

一生懸命に働いて、家を建て、家族を守る。

今は価値観が多様化し、昔よりも「個」の存在が重視される時代になりました。

私自身も家庭を持たない身ですので一人で生きる選択肢もあるとは思うのですが、ひろしのように家族を大切に思う生き方にはどう理屈でごまかそうとしても、やはり憧れます。

クレヨンしんちゃんの映画もたくさんあって全部は見れていません。

だけど、「暗黒タマタマ大追跡」は個人的に劇場版しんちゃんの中では一番面白い作品です。

しんちゃんの映画の中で特に名作として語られる「嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」及び「嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦」。

それらが大人も(あるいは大人が)泣ける要素で高いクオリティを持っているのに対し、「暗黒タマタマ大追跡」はひたすらギャグに特化した作品です。

濃すぎるキャラのオカマ三兄弟や敵のチーママやサタケ。ホラー要素たっぷりに襲ってくる外人・ヘクソンや駄目女刑事・東松山よねなど個性的なキャラクターとお馴染みの野原一家の掛け合いのリズムが良すぎて久しぶりに鑑賞しても子どもの頃みたいに笑ってしまいました。

物語の中心はしんのすけの妹のひまわり。

ひまわりは本作が劇場版デビュー作となります。

家族が一人増えたためか、事件に巻き込まれた一家の大黒柱としてのひろしの苦悩が映画の中で描かれます。

敵が世界を支配するのを目的とし、味方が世界を守るのを目的とする中でひろしはひたすら家族を守ることに一生懸命です。

中盤で家族と離れてよねと二人きりになった場面。

突然日常を壊され苦悩するひろしですが、よねの仕事にかける思いを聞き気持ちを静めます。

大人しかいない場面なので子どもにはやや退屈に感じるかもしれません。

だけど、大人同士で仕事の話で互いを知るこの場面。

大人になった目で見ると何かいいなあと思うんです。

別によねとひろしにラブストーリーが生まれるとかじゃないんですが、大人は苦労もあるんだぞっていうのが伝わってきて。

それでも仕事するのが大人なんだって今になると考えます。

子どもの頃はわかるはずもありませんが、大人になるとひろしのやってることって物凄く大変なことなんだと少しだけわかるようになりました。

大人になれば当たり前に生活できる仕事を持って、当たり前に家庭を持てると思っていた。

だけどそれはとてつもなく難しいことでした。

ましてやそれを守るとなるとさらに苦労するのがわかります。

ひろしも、そして私の親も立派な人たちだ。

今は心からそう思います。

人間と言うのはやっかいなもので、自分でお金を稼ぐようになると、まるで自分だけで頑張ったような気になる時があります。

本当はそこには自分を生み育てた親や家族、友人、恋人、お金を頂くお客さんや一緒に働く会社の人、そうした人たちをさらに支える家族の存在があってはじめて自分も生きられるというのに。

自分一人じゃ何もできない。それを忘れそうになった時は、私は冒頭に書いたひろしの台詞を思い出します。

アニメや映画、色々な作品に名言がありますが何の変哲もない普通の人だからこそひろしの言葉は胸をうちます。

それは、演じた声優さんの名演としても多くの人に記憶されていきます。

クレヨンしんちゃんの玩具を買ってくれて、映画に連れて行ってくれた両親。

一緒にクレヨンしんちゃんを見た妹や親類。

しんちゃんごっこをした友達。たくさんの人のお陰で私はでかくなれました。

勿論、クレヨンしんちゃんに携わったキャスト・スタッフの皆さんのお陰でもあります。

野原ひろし、父ちゃんの背中は大人になってからのほうが大きく強く見えるものなんですね。

クレヨンしんちゃん、ガンダムOO、ジョジョの奇妙な冒険、ぼのぼの、アイアンマン‥‥‥

藤原啓治さん、数々の名演を見せていただきありがとうございました。

ご冥福をお祈りします。

どうか安らかに‥‥‥


映画クレヨンしんちゃん 暗黒タマタマ大追跡