ネコはミカン片手に夜明けを待つ

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ドゲンジャーズ『エピソード・オブ・アイドール』感想 ~アイドールの物語の完結と田中の物語の始まり~

はじめに

※この記事は『エピソード・オブ・アイドール』のネタバレを含みます。

ドゲンジャーズ』の魅力というとたくさんあるんですが、やはり理屈とか理由なしに「面白い」というのが最大の魅力だと思うんです。

伏線、テーマ‥‥‥ そういった部分よりも、単純に見ていてとても面白いと思う。

大人になると、どうしても作品を見る時にその裏にあるものを先に探ろうとするんです。

大人はその部分を作品の面白さの基準にしてしまいがちだけど、ドゲンジャーズにはそれをしなかった。

とにかく映像から流れ出てくるエネルギーに、毎回魅了されていました。

そしてキャラクターの魅力。一見して誰がどんなキャラなのか、すぐに覚えることができる強い個性の持主ばかり。

特撮という、まさにキャラクターが命の作品にはそれが本当に大事だと思うんですがドゲンジャーズはそこをとても大切に作られていました。

ドゲンジャーズ12.5話『エピソード・オブ・アイドール』。

本作もそのドゲンジャーズの魅力に忠実に沿った、ファン待望の作品でした。

あらすじ

これは、持ち主を大切に思うある女の子の物語。

時間はドゲンジャーズの最終話。

金印公園で束の間の平和を楽しむヒーロー達。

いつまでも来るまで待たされることにしびれを切らしたヤバイ仮面が、とうとうヒーロー達に襲い掛かる。

しかし、多勢に無勢で勝てるわけもなくオーガマンに敗れるヤバイ仮面。

主人公・田中もオーガマンルーキーに変身し戦うが、アイドールの力を使おうとした腕から何故かその力が消滅してしまう。

実は、かってフクオカリバーとの戦いで行方不明となったエボシ武者の布が偶然、金印公園に置かれていたアイドール達の人形に被さっていた。

布に宿った金印の力で再び実体化する二人のアイドール。その影響でルーキーの腕から力が消えたのだ。

そして、実体化したのはもう一人。オーガマンルーキー・田中次郎が子どもの頃遊んでいたヒーロー人形の『グレイトエース』。

田中の幼馴染・ゆきを連れ去るグレイトエース。それを追う二人のアイドール。

近所の小学校に逃げ込んだグレイトエース。そのテンションに振り回されるゆきとアイドール達。

彼らの前に悪の秘密結社のシャベリーマンが現れるが、グレイトエースはそれを軽く撃退する。

自分達がいなくなった後の田中を心配していたアイドール。

それを見たグレイトエースは、突然ゆきを探しに来た田中に戦いを挑む。

圧倒的な力にねじ伏せられる田中。

それでも諦めない田中の姿に、アイドールは彼の成長を感じ再びルーキーの腕となる覚悟を決める。

「自分の時代はヒーローは一人だった」

と語るグレイトエースにルーキーは、自分は皆と供に未来に進んでいく決意を語る。

その気持ちを知ったグレイトエースは、田中の成長と強さを認める。

戦いが終り、アイドールはこれからも田中を見守っていくために人形に戻っていく。

田中とゆきの幸せを願いながら。

その頃、グレイトエースに捕まっていたシャベリーマンはどうにか自力で脱出。

金印に代わる、新たな力を探さねばならないことに頭を悩ませていた。

しかし、彼は気づいていなかった。

自分が装着している鎧の背中で、何かが不気味に輝いていることを‥‥‥

感想

アイドール役に、テレビ版から続投して新田恵海さん。

ゲストキャラのグレイトエースに浪川大輔さん。

監督を、テレビ版で福岡県民の心を燃えさせてくれた荒川史絵さんが担当。

本作はヒロインの物語です。そして「見守る」がキーワードでした。

主人公は田中なんですけど、話の中心となっていたのはゆきとアイドール。

キタキュウマンやヤバイ仮面の出番を抑える代わりに、話の焦点を田中達に当てたことでストーリー性の高い話になっていました。

とくに、ゆきちゃん(この書き方の方がファンにはお馴染みですね)のヒロイン度がテレビ版より上がっていて個人的に好印象でした。

テレビ版では話数の都合上、短い時間の中で描き切れなかったゆきちゃんの魅力。

私は、主人公の背中を見守る彼女のヒロイン像が凄く好きでした。

ゆきちゃんは幼い頃から田中を知っているからこそ、彼のことを信じている。

それは、話の中で徐々に信頼が作られていくのとはまた違った魅力があるんです。

母性というのか、戦う男を信じて待ってくれてる女性って素敵だなと。安心感ですね。

ゆきちゃんを演じる桃咲まゆさん。

彼女の大らかな演技も、ゆきちゃんの心の広さを上手く表現できていたと思います。

日本の、ことに特撮作品だと防衛チームや戦隊の印象でヒロインは「戦う女性」のイメージが強いかもしれません。

一方で、直接戦わなくでも「主人公を信じること」もヒロインの強さだと思うんです。

帰ってきたウルトラマンの坂田アキとか、仮面ライダークウガの沢渡桜子などが近い印象ですね。

信じるというのがゆきちゃんの行動。この行動の要素は実はとても大切なことで、本作でも取り上げられます。

 

逆に、テレビ版で大きくヒロインの役割を担っていたのはアイドールでした。

テレビ版での彼女の役割を考えると、それは田中を成長させること

テレビ版では彼女の死によって、ヒーローの自覚が固まった田中。

それまで頼っていたオーガマンへの依存心を捨てる場面は、田中を演じる正木郁君の熱演もあり名場面でした。

では、本作では新たに何が描かれていたのか。それは、アイドールの物語の完結編

テレビ版では、アイドールの死を乗り越えることで田中が成長しヤバイ仮面を倒しました。

その続きとなる本作では、田中の成長に寂しさを覚えるアイドールの姿が描かれています。

田中の側にいたい、しかしそれではゆきちゃんが幸せになれないことに苦悩するアイドール。

ここで、彼女が田中に抱いてた感情が何かはっきりと語られます。

アイドールもヒロイン度が爆上がりなんですが、彼女もまたゆきちゃんと同様に主人公を見守るヒロインだったんですね。

その姿は一人の女性で、田中を守りグレイトエースに立ち向かう姿は最後の花道と呼ぶに相応しいものでした。

作品の性質は全然違うんですけど、田中君の姿に『機動戦士Zガンダム』の主人公であるカミーユ・ビダンが重なりました。

カミーユは色々悲惨な目にあった末に精神を破壊されてしまった。

でも、ヒロインで幼馴染のファ・ユイリィがずっと側にいてくれたから回復することができました。

田中君も同じで、一度アイドールを失っても戦い続けられたのはゆきちゃんという守るべき存在があったからだと思います。

そして本作でも、アイドールという見守ってくれる存在がいたことでグレイトエースに勝てた。

見守ってくれる女性がいるから戦うって物語の王道パターンで、田中が王道的な主人公だということが伝わってきます。

ドゲンジャーズは他のヒーローもいるので、ずっと田中君がでずっぱりというわけではありませんでした。

なので田中の活躍が割を食ってる部分があったので、最終回になってようやく田中君の物語の始まる一歩手前辺りまで来た感じでした。

アイドールを救えなかった過去の悔いを乗り越え、本作をもってようやく田中の物語が始まります。

一方で、他のドゲンジャーズメンバーもたくさんのネタで笑わせてくれました。

中でも、放送後に現実で起きた出来事を迷わず作中に入れ込みネタにしてくる部分はまさにローカルヒーローならではの緩さを感じて面白かったですね。

そして、本作のもう一人の功労者であるグレイトエース

ドゲンジャーズで初めて、悪ではないけど主人公に立ちはだかる役割を持ったキャラです。

ヤバイ仮面が悪の立場から田中を試すのと対照的に、ヒーローの立場から田中を試すグレイトエース。

それはメタ的な意味も含んでいて、ドゲンジャーズも含む既存の特撮ヒーロー作品への問いかけでもありました。

言葉に行動が伴うことは、正義の味方の最低条件だ。

引用:ドゲンジャーズ『エピソード・オブ・アイドール』

コミカルなキャラかと思いきや、物凄く確信を突いた名言を残していて思わず背筋がぞっとしましたね。

特撮物には本当にたくさんの人物が出ます。

そう言えば魅力的に感じる人物って、行動が伴っていたことを思い出しました。

好きな作品なんで、どうしても推しちゃうんですけど仮面ライダークウガ。

今作ではライダーは一人しか出ません。

後は普通の人間ばかりなんですけど、警察関係者だけでなく主人公を支えるおやっさんなど市井の人も怪人の恐怖と戦っている。

力はなくても、怪人が出る街で日々を懸命に生きることがおやっさんの戦いだったんじゃないかと今は思います。

起こっている出来事に、その人なりの立ち向かう行動が描かれているからキャラが魅力的になる。

それを、グレイトエースの台詞で気づかされました。

それはドゲンジャーズも同じで、エルブレイブのおやっさんやゆきちゃん。

皆行動が伴っているから、キャラが立っているなと。

こういう台詞が浮かぶこと自体、製作者がヒーローと正義に真剣に向かい合ってきた証だと思います。

その真摯なヒーローへの姿勢が作品のクオリティを高めたのだとも思います。

あと、グレイトエースの小道具で漫画「YABAI!」が登場したのも面白かったですね。

 

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 女性達にスポットの当たった『エピソード・オブ・アイドール』。

テレビ版では描き切れなかったアイドールの心情と、ゆきちゃんの魅力を描き出し製作者のキャラクターへの愛を感じました。

作ってる人が登場するキャラクターを愛してるのだから、作品が面白くならないわけがない。

番外編であると同時にドゲンジャーズ一期の完結編であり、同時に二期の0話とも呼べる本作。

ストーリー性を重視した雰囲気は、軽快なテンポを重視していたテレビ版とはちょっぴり違和感を感じる方もいるかもしれません。

だけど、これを田中の物語のスタートと考えるとこれから始まる彼の物語にワクワクが押し寄せてくる話でした。

本作のポイント
  • 本作は女性の物語
  • 本作は田中の物語の始まり
  • テレビ版よりストーリー性を重視した内容